(1) |
二酸化炭素排出の少ないエネルギーの供給 |
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国民生活や経済活動の過程で排出される二酸化炭素の実質的低減を図るた
めには、二酸化炭素排出が少ないエネルギーの供給が必要であり、以下の施
策を積極的に推進する。 |
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原子力発電の設備利用率向上と推進 |
原子力は、二酸化炭素排出が少なく、環境と経済の両立に資するエネルギ
ーであることから、科学的・合理的規制のもと、運転期間(プラント停止間
隔)の延長や検査の運用改善などにより、利用率の向上を図る。
エネルギー自給率を高めるためにも、高速増殖炉(FBR)サイクル
*5 や水
素社会の実現に向けた高温炉の開発など、次世代の技術開発について推進す
る。
また、原子力発電を京都メカニズム
*6 の「CDM」(クリーン開発メカニズ
ム)の対象とするよう国際的な提言を強化する。 |
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A |
化石燃料の有効活用 |
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化石燃料(石油・石炭・天然ガス)の二酸化炭素排出量を減少させること
につながる火力発電の熱効率向上を進める。
石炭は、供給安定性や経済性などを総合的に勘案し、石炭ガス化発電
*7 など
のクリーンコールテクノロジーの開発と国際的な技術協力を進めつつ、着実
に活用する。
あわせて、二酸化炭素の大幅削減のため、二酸化炭素を回収・貯留
*8 する技
術開発を積極的に推進する。 |
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B |
再生可能エネルギーの推進 |
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再生可能エネルギーは、発電過程で二酸化炭素を排出しないことから温暖
化対策には有効であり、枯渇することのない純国産エネルギーであることか
ら、環境適合とエネルギーセキュリティーの観点から推進する。
再生可能エネルギーの活用にあたっては、それぞれのエネルギー源の長所
5
短所を踏まえたうえで、既存エネルギー源とのベストミックスを図りながら
導入する。
なお、熱利用分野
*9 の利用拡大を図るため、熱利用分野を対象とした「グリ
ーン証書
*10 」と「RPS法」
*11 の導入を検討する必要がある。 |
(2) |
省エネルギーの推進とエネルギー消費効率の向上 |
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省エネルギーは、ライフスタイルやビジネススタイルなど、国民・企業の
理解なくしては進めることはできず、官民一体となった取り組みが必要であ
る。
また、エネルギー消費効率の向上について、国民生活や経済活動において、
快適性と利便性を維持・向上しながらエネルギー消費量を低減していけるよ
う、長期に亘る持続可能性のある施策を進めなければならない。 |
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@ |
国民運動の推進 |
省エネルギーを進めるには、国民の意識改革やライフスタイルの変革を図
り、家庭や職場における節電・節水、省エネ製品の普及、エコキュートなど
の高効率機器への転換、電気自動車をはじめとする環境負荷の少ない自動車
への転換などの国民運動を推進する。 |
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A |
産業部門における省エネルギー機器の開発・普及推進 |
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産業分野ごとにトップランナー方式
*12 などを活用し、産業部門における省エネ技術を開発、促進する。
オフィスビルにおいては、ESCO 事業
*13 を通じた効率的な省エネルギー設備の
導入や効率的な運用、エネルギーマネジメントシステムによる省エネルギー
化を推進する。
あわせて、二酸化炭素の大幅削減のため、二酸化炭素を回収・貯留
*8 する技
術開発を積極的に推進する。
運輸部門においては、低燃費自動車の普及促進を図るとともに、燃料の多
様化転換を図るプラグインハイブリッド車を含む電気自動車の開発・普及と、
モーダルシフト
*14 に適切に対応できるインフラ整備を図る。 |
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(3) |
地球温暖化対策を推進するための支援策 |
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経済活動との両立を図っていくためには、目標の設定及びエネルギー供給
側とエネルギー利用側の対策と合わせて、これら対策の促進を図るため以下
の支援策も必要である。 |
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@ |
財政、金融措置について |
省エネ技術や再生可能エネルギーの開発、導入に向けては多額の設備投資
が必要であり、省エネ機器の導入や技術開発に関する補助金制度、融資制度、
減税措置などの手立てがとられるべきである。
また、目標達成時の減税措置など、目標達成に向けたインセンティブを高
めるための措置も必要である。 |
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A |
環境対策に係わる税について |
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既存の地球温暖化対策を検証し、費用対効果を考慮した環境対策に係わる
税の使途の選択と集中を進める必要がある。
新たな税の導入については、既に地球温暖化への対応強化などの目的でエ
ネルギー価格に「化石燃料の炭素含有量」に着目した石油石炭税があること
から、エネルギーへの二重課税とならないよう既存税制との整合を図るなど、
慎重な検討がなされるべきである。
また、課税する場合は小売段階とし、消費者が環境問題を意識する仕組み
が必要である。 |
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B |
排出量取引制度について |
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温室効果ガス排出量の過不足分を売買する制度は、排出量の融通であり、
真に排出削減につながるか疑問である。
排出量上限の設定においては、産業間や企業間にて地球温暖化対策や省エ
ネ技術の取り組みに違いがあり、排出量上限の公平な設定は困難である。
また、温室効果ガス排出量に上限を設定することは、各企業へのエネルギ
ー量の割当であることから、国民生活・経済活動への制約になりかねない。
仮に、制度導入を検討せざる得ない場合でも、実証に基づく研究・論議を
進め、その効果や起こりうる弊害や他の政策措置との徹底的な比較検討を行
うべきである。 |
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(4) |
環境先進国としての国際貢献 |
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地球温暖化対策は、地球全体で、温室効果ガス濃度を気候変化に影響のな
い水準に安定化させる必要があることから、全世界が足並みをそろえて取り
組むことができる国際的枠組みを構築する。
国際的枠組みづくりにあたっては、全ての国が参加できる「枠組みとルー
ル」作りに向けて日本がリーダーシップをとっていく必要がある。
また、日本の省エネ技術は世界最高水準にあり、新規のODAなどを活用
して途上国に技術移転し、地球レベルでの温室効果ガス削減に貢献していく
べきである。 |
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