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 地球温暖化問題
 地球温暖化対策に対する電力総連の考え方 (2009.5)

1. はじめに
2. 基本的視点
3. 温室効果ガス削減に向けた目標について
4. 具体的対策


COCOちゃんとその友達 
  COCOちゃんとその友達

1.はじめに

 電力総連は、従来から地球温暖化対策を含めた環境対策について自らの考え方 をまとめ、連合の政策・制度へ反映するなど対応してきた。さらに、1997 年11 月 から「地球を救うCOCO ちゃん運動」を展開し、“ネクタイやめタイ運動”や“カ イテキ重ね着運動”、COCO ちゃん環境家計簿を活用した家庭におけるエコライフ 等の国民運動を中心に取り組んできた。  
こうした中、本年、京都議定書第1 約束期間(2008 年〜2012 年) *1 がスタート するとともに、2013 年からのポスト京都議定書の論議が本格化してきたことなど を踏まえ、従来の考え方に加え、地球温暖化対策全般に対する考え方をまとめる ものである。




2.基本的視点

 京都議定書の議長国である日本は、まず京都議定書で定められた目標を達成す るために最大限の努力を行わなければならない。  

一方、IPCC(気候変動に関する政府間パネル) *2 の第4次評価報告書による と、地球温暖化による気候への影響を抑えるためには2050 年における世界の二酸 化炭素排出量を50%削減する必要があるとされている。

 地球温暖化問題は世界が直面する最大の課題の一つであり、世界レベルでの早 急な取り組みに着手する必要があり、全世界であらゆる取り組みを行っていかな ければならない。

 そのためには各国が納得するとともに、実効ある国際的枠組みが必要であり、 環境先進国である日本が環境対策技術の開発・提供などによる国際的支援を通し て、地球全体で持続可能な地球温暖化対策を構築していくためのリーダー的な役 割を果たすことが期待される。

 地球温暖化の原因とされる温室効果ガス *3 の二酸化炭素排出の多くが国民生活 を基礎とした経済活動によるエネルギー消費で排出されることから、地球温暖化 対策と、エネルギー問題は表裏一体である。エネルギーは国民生活や経済活動に 必要不可欠なものであり、温室効果ガスの排出量削減とエネルギーセキュリティ ーが両立した対策が求められる。

 地球温暖化対策に取り組むにあたっては、これらを踏まえたうえで、「環境と 経済の両立」を大原則とし、「地球温暖化の防止」と「持続可能な成長」の双方を 実現するべく、「二酸化炭素排出の少ないエネルギーの供給」「エネルギー消費効 率の向上」の視点からアプローチが必要である。 さらに国際的な動向に注目しつつも、効果的で合理的な目標の設定および実効 ある施策を追及し、着実に実行していくことが、とりわけ重要である。




3.温室効果ガス削減に向けた目標について

(1)  京都議定書第1約束期間(2008 年度〜2012 年度)の目標について
   
   日本は、京都議定書で課された目標である、温室効果ガス1990 年比−6% を達成するために最大限の努力を行う。

(2)  2013年以降の目標について
   
   2013年以降の地球温暖化対策についても、中長期的な温室効果ガス削減目 標の設定が必要である。国別目標や期間の設定など実際の目標設定にあたっ ては、科学的、技術的根拠の裏付けのもと、実効性、公平性、合理性など様々 な角度から、慎重な検証を行われるべきである。
 また、地球規模での温室効果ガス削減を実現するために、「セクター別アプ ローチ」 *4 などを活用し、納得性のある目標設定が行われ、先進国から途上国 への省エネ技術のスムースな移転につなげていくことが必要である。





4.具体的対策

(1) 二酸化炭素排出の少ないエネルギーの供給
   
   国民生活や経済活動の過程で排出される二酸化炭素の実質的低減を図るた めには、二酸化炭素排出が少ないエネルギーの供給が必要であり、以下の施 策を積極的に推進する。
   
@ 原子力発電の設備利用率向上と推進
 原子力は、二酸化炭素排出が少なく、環境と経済の両立に資するエネルギ ーであることから、科学的・合理的規制のもと、運転期間(プラント停止間 隔)の延長や検査の運用改善などにより、利用率の向上を図る。
 エネルギー自給率を高めるためにも、高速増殖炉(FBR)サイクル *5 や水 素社会の実現に向けた高温炉の開発など、次世代の技術開発について推進す る。
  また、原子力発電を京都メカニズム *6 の「CDM」(クリーン開発メカニズ ム)の対象とするよう国際的な提言を強化する。
   
A 化石燃料の有効活用
   化石燃料(石油・石炭・天然ガス)の二酸化炭素排出量を減少させること につながる火力発電の熱効率向上を進める。
  石炭は、供給安定性や経済性などを総合的に勘案し、石炭ガス化発電 *7 など のクリーンコールテクノロジーの開発と国際的な技術協力を進めつつ、着実 に活用する。
  あわせて、二酸化炭素の大幅削減のため、二酸化炭素を回収・貯留 *8 する技 術開発を積極的に推進する。
   
B 再生可能エネルギーの推進
   再生可能エネルギーは、発電過程で二酸化炭素を排出しないことから温暖 化対策には有効であり、枯渇することのない純国産エネルギーであることか ら、環境適合とエネルギーセキュリティーの観点から推進する。
  再生可能エネルギーの活用にあたっては、それぞれのエネルギー源の長所 5 短所を踏まえたうえで、既存エネルギー源とのベストミックスを図りながら 導入する。
  なお、熱利用分野 *9 の利用拡大を図るため、熱利用分野を対象とした「グリ ーン証書 *10 」「RPS法」 *11 の導入を検討する必要がある。

(2) 省エネルギーの推進とエネルギー消費効率の向上
   
   省エネルギーは、ライフスタイルやビジネススタイルなど、国民・企業の 理解なくしては進めることはできず、官民一体となった取り組みが必要であ る。
 また、エネルギー消費効率の向上について、国民生活や経済活動において、 快適性と利便性を維持・向上しながらエネルギー消費量を低減していけるよ う、長期に亘る持続可能性のある施策を進めなければならない。
   
@ 国民運動の推進
 省エネルギーを進めるには、国民の意識改革やライフスタイルの変革を図 り、家庭や職場における節電・節水、省エネ製品の普及、エコキュートなど の高効率機器への転換、電気自動車をはじめとする環境負荷の少ない自動車 への転換などの国民運動を推進する。
   
A 産業部門における省エネルギー機器の開発・普及推進
   産業分野ごとにトップランナー方式 *12 などを活用し、産業部門における省エネ技術を開発、促進する。
  オフィスビルにおいては、ESCO 事業 *13 を通じた効率的な省エネルギー設備の 導入や効率的な運用、エネルギーマネジメントシステムによる省エネルギー 化を推進する。 あわせて、二酸化炭素の大幅削減のため、二酸化炭素を回収・貯留 *8 する技 術開発を積極的に推進する。
 運輸部門においては、低燃費自動車の普及促進を図るとともに、燃料の多 様化転換を図るプラグインハイブリッド車を含む電気自動車の開発・普及と、 モーダルシフト *14 に適切に対応できるインフラ整備を図る。
   

(3) 地球温暖化対策を推進するための支援策
   
   経済活動との両立を図っていくためには、目標の設定及びエネルギー供給 側とエネルギー利用側の対策と合わせて、これら対策の促進を図るため以下 の支援策も必要である。
   
@ 財政、金融措置について
 省エネ技術や再生可能エネルギーの開発、導入に向けては多額の設備投資 が必要であり、省エネ機器の導入や技術開発に関する補助金制度、融資制度、 減税措置などの手立てがとられるべきである。
 また、目標達成時の減税措置など、目標達成に向けたインセンティブを高 めるための措置も必要である。
   
A 環境対策に係わる税について
   既存の地球温暖化対策を検証し、費用対効果を考慮した環境対策に係わる 税の使途の選択と集中を進める必要がある。
  新たな税の導入については、既に地球温暖化への対応強化などの目的でエ ネルギー価格に「化石燃料の炭素含有量」に着目した石油石炭税があること から、エネルギーへの二重課税とならないよう既存税制との整合を図るなど、 慎重な検討がなされるべきである。
 また、課税する場合は小売段階とし、消費者が環境問題を意識する仕組み が必要である。
   
B 排出量取引制度について
   温室効果ガス排出量の過不足分を売買する制度は、排出量の融通であり、 真に排出削減につながるか疑問である。
  排出量上限の設定においては、産業間や企業間にて地球温暖化対策や省エ ネ技術の取り組みに違いがあり、排出量上限の公平な設定は困難である。
 また、温室効果ガス排出量に上限を設定することは、各企業へのエネルギ ー量の割当であることから、国民生活・経済活動への制約になりかねない。
 仮に、制度導入を検討せざる得ない場合でも、実証に基づく研究・論議を 進め、その効果や起こりうる弊害や他の政策措置との徹底的な比較検討を行 うべきである。
   
(4) 環境先進国としての国際貢献
   
   地球温暖化対策は、地球全体で、温室効果ガス濃度を気候変化に影響のな い水準に安定化させる必要があることから、全世界が足並みをそろえて取り 組むことができる国際的枠組みを構築する。
  国際的枠組みづくりにあたっては、全ての国が参加できる「枠組みとルー ル」作りに向けて日本がリーダーシップをとっていく必要がある。
 また、日本の省エネ技術は世界最高水準にあり、新規のODAなどを活用 して途上国に技術移転し、地球レベルでの温室効果ガス削減に貢献していく べきである。
   





用語解説

*1 京都議定書
   1997 年12 月京都で開催されたCOP3 で採択された気候変動枠組条約の議定書。日本は1998 年4 月28 日に署名、2002 年6 月4 日に批准。先進締約国に対し、2008〜12 年の第一約束期 間における温室効果ガスの排出を1990 年比で、5.2%(日本6%、アメリカ7%、EU8%など) 削減することを義務付けている。。
   
*2 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)
   各国の研究者が政府の資格で参加し、地球温暖化問題について議論を行う公式の場として、 国連環境計画(UNEP)及び世界気象機関(WMO)の共催により1988 年11 月に設置されたも の。温暖化に関する科学的な知見の評価、温暖化の環境的・社会経済的影響の評価、今後の 対策のあり方の3 つの課題について検討している。
   
*3 温室効果ガス(GHG)
   大気中の二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC 類、PFC 類、SF6 のガスは太陽からの 熱を地球に封じ込め、地表を暖める働きがある。これらのガスを温室効果ガスという。
   
*4 セクター別アプローチ
   各国の産業を電力や鉄鋼、セメントなどの部門に分け、部門ごとに今後削減できる量を計 算し、これを積み上げて先進国の新たな削減目標を設定すること。
 経済発展を遂げた途上国に対しては、指標を元に技術の移転や資金協力を進め、世界全体 の温室効果ガスの削減を目指すこと。
   
*5 高速増殖炉(FBR)サイクル
   高速増殖炉は、燃えないウラン238 を燃えるプルトニウム239 に効率よく変換することで、 消費した以上の燃料を生み出すことができます。これを増殖といいます。増殖によりウラン 資源を有効利用できます。この高速増殖炉を使うことによって、プルトニウムを利用しない 場合に比べ、ウラン資源の利用効率が100 倍以上に向上する。
   
*6 京都メカニズム
   海外で実施した温室効果ガスの排出削減量等を、自国の排出削減約束の達成に換算する ことができるとした措置。CDM・JI・ETの3 つのメカニズムと森林の吸収量の増大 も排出量の削減に算入を認めている。これらを総称して京都メカニズムと呼んでいる。
 
  • CDM:クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)
      先進国と途上国が共同で温室効果ガス削減プロジェクトを途上国において実施し、そこで 生じた削減分の一部を先進国がクレジットとして得て、自国の削減に充当できる仕組み。
  • JI:共同実施(Joint Implementation)
      先進国同士が共同で排出削減や吸収のプロジェクトを実施し、投資国が自国の数値目標の 達成のためにその排出削減単位をクレジットとして獲得できる仕組み。
  • ET:排出権取引(Emission Trading)
      全体の排出量を抑制するために、あらかじめ国や自治体、企業などの排出主体間で排出す る権利を決めて割振っておき(排出権制度)、権利を超過して排出する主体と権利を下回る 主体との間でその権利の売買をすることで、全体の排出量をコントロールする仕組みを、排 出権取引という。
 
*7 石炭ガス化発電
   石炭と空気を高温で反応させて可燃性ガスを作り、そのガスでコンバインドサイクル発電 を行うもので、従来の石炭火力と比較して大幅に発電効率を高めることができる。実用段階 ではCO2 排出量を2 割程度の低減を見込んでいる。
   
*8 CO2回収・貯留技術
   CO2 を分離・回収、輸送し、地中や海洋等に長期的に貯蔵し、大気から隔離することで CO2 排出を抑制する技術。
   
*9 熱利用分野
   太陽熱や地中熱などのエネルギーを活用した、冷房・暖房・給湯システム。
   
*10 グリーン証書
   自然エネルギーを活用した、「電力そのものの価値」の他に、省エネルギー(化石燃料削 減)・CO2 排出削減などの価値である「環境付加価値」を「証書」という形で取引するシステム。
   
*11 RPS法
   電気事業者に新エネルギー等から発電される電気を一定割合以上利用することを義務づ ける法律。
   
*12 トップランナー方式
   電気製品のエネルギー効率や乗用車の燃費などの環境性能を、発売されている商品の最高 レベルに合わせて製造するように促すこと。
   
*13 ESCO事業
   オフィスビルにおける、省エネルギー改善に必要な、技術・設備・人材・資金などすべて を包括的に提供する事業。
   
*14 モーダルシフト
   貨物の輸送手段をエネルギー消費効率がよい大量輸送機関に転換を図ること。具体的には、 トラックや航空機による輸送を鉄道や船舶による輸送で代替することが考えられている。
   



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