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ユアテックユニオンの門藤さん国土交通大臣賞を受賞!

受賞式において作品を発表する門藤さん
受賞式において作品を発表する門藤さん


 ユアテックユニオンの門藤剛夫(もんどうたけお)さんが、厚生労働省、国土交通省および(独)雇用・能力開発機構が主催する建設業に働く若者を対象にした作文コンテストで、見事国土交通大臣賞を受賞されました。(受賞式は平成19年11月2日に明治記念館で行なわれました)
 作品は「ひとつのおにぎり」というタイトルで、中越沖地震の復旧作業時の体験を感動的に表現したもので、選考委員から「建設業の存在価値を実に巧みに描写している」との評価を受け、全国1,672点の応募の中から選ばれました。
 ここにその作品を掲載させていただきます。


題 名 : 「 ひ と つ の お に ぎ り 」

  「電気屋さん,ありがとね。ごくろうさま」
 そう言ってニコッと笑い,差し出した手にはひとつのおにぎり。そのおにぎりの味は今でも鮮明に覚えています。
 私は,電力系の設備工事業に従事するいわゆる「電気屋」です。私の会社は総合エンジニアリング企業として,電力設備工事・情報通信工事・土木建築工事・総合設備工事を行っており,地域社会の発展に貢献することを目指しています。
 私の配属された部署は「配電部門」で,今年で入社五年目になりました。「配電部門」とは電力流通設備の中で電気を使用するお客様と最も近い配電線設備の施工・保守を行っています。
 私は,普通科の高校を卒業後,電気に興味があった事もあり,大学では電気・電子工学科を専攻しました。小学校の頃に原子力発電所の見学に行った時,「電気とは人間が生活するうえでなくてはならないもの」と,その当時はただ漠然とではありますが,そう感じたことを記憶しております。入社以来,このことは常に頭の中にあり,「自分はライフラインの維持・構築の一翼を担っているんだ」という気持ちで今に至っています。
 入社二年目の秋,衝撃的な出来事が起こりました。新潟中越大震災です。私にとってこの仕事をしていくうえで大きな決意を抱かせてくれた出来事になりました。
 当時,勤務地が仙台であった私は,新潟で地震があったことをテレビのニュースで知りました。私の出身が新潟ということもあり,テレビに映る変わり果てた故郷の光景が信じられず,愕然としたことを覚えております。そんな時,会社から「新潟で地震があった。災害復旧応援で新潟に行ってくれ」との連絡がありました。私は故郷の為何かをしたいという一心で,迷う事はありませんでした。その日のうちに仙台を出発し,一路新潟に向かいました。途中,高速道路も震災の被害に遭っていた為,通行不能となっており,新潟に到着したのは出発して十四時間後の翌日の昼頃でした。
 そこでまず私が眼にしたのは,激しく隆起したり陥没した道路,跡形もなく倒壊した民家,そしてそこに呆然と立ち尽くす被災した方々の姿でした。もちろん配電設備も大きな被害を受けていました。
 そんな中,昼夜を問わず復旧にあたる仲間たちの姿がそこにはありました。本来疲弊しきっているはずなのに,その表情からは全く疲れなど感じさせず,「さぁ,次行くぞ!」と次々と被害に遭った現場をまわっては復旧作業にあたっていました。そんな仲間たちの姿からはむしろ「気迫」さえ感じられました。
 私もすぐに現場に向かい,復旧作業にあたりました。地震の大きな揺れにより壊滅的な被害を受けた配電設備や木の伐木など,次々と現場をまわっては復旧作業にあたり,その日の復旧作業は深夜にまで及びました。復旧作業を行っている最中にも,震度5程度の大きな余震が数回あり,作業を一時中断したこともありました。
 そんな復旧作業が続く中でも,配電設備の被害の大きかった地域は夜になっても電気を送れる見込みがなく,灯りがともらず真っ暗なまま夜を迎える家が多々見られました。いつまた大きな余震が来るかわからないので,家の中にも入れず,車庫の中で毛布にくるまり,懐中電灯の灯りひとつで一晩を過ごす家庭が多くありました。そんな光景を目の当たりにし,「みんなが不自由のない生活を送ることが出来る今の世の中,光がないということはこんなにも不安で恐怖なことなのか。なんとか早く電気を送らなければ」という強い気持ちと使命感が掻き立てられました。
 次の日も,その次の日も復旧作業は続き,長く停電していた地域にもようやく二日ぶりに電気が送られることになりました。私の会社の工事車両を見るなり,手を合わせ拝む方の姿も見受けられました。
 そんな時,ある一軒の家の改修工事が終わり,そのお客様に工事が終わった旨の報告に行くと,「これ,電気が使えるようになって初めて炊いたごはんで作ったの。良かったら食べて」と,握りたてのあたたかいおにぎりを頂きました。震災に遭ってから,それまで食べる物もままならなかったであろうというその時に分けてくれたのです。私はその頂いたおにぎりを食べながら,人のあたたかさというものを感じ,何か熱いものが胸の奥からこみあげてきて,胸いっぱいになりました。その時の「俺のやっている仕事って,こういうものなんだ」という気持ち,そしてあのおにぎりの味は一生忘れることはありません。
 「電気屋さん,ありがとね。ごくろうさま」
 この言葉を一生の励みに,今後も高い使命感を持って,配電業務に従事していくつもりです。


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