III 具体的な取り組み
1 雇用安定・労働条件の確保
(1) 雇用安定の確保
電力総連、構成総連及び部会は、対応する経営側に雇用安定に関する申し入れを行うこととします。
また、電力関連産業で働く者の安全・健康の確保、仕事と生活の調和が図れる公正な働き方などの観点に立って、グループ経営施策に対する労使の意見交換などが必要であるとの認識の下、構成総連を中心としたグループ労使懇談会などの設置・充実に取り組むこととします。
(2) 労働協約の完全締結及び整備・充実
雇用安定の確保や労働条件の維持、健全な労使関係の維持を担保するため、全ての加盟組合は、労働協約の完全締結の実現を目指すこととします。
また、労働環境点検活動を踏まえ、人事条項のクリア水準を最低限として、「労働協約締結のための基本的考え方 (労働環境点検活動の冊子に掲載)」を基本に、労働協約の整備・充実が図っていくこととします。
(3) 労使協議会等の充実
働く者を取り巻く環境が急激に変化する中、雇用と総合的労働条件を守るためには、労使自治の強化が益々重要になっています。また、働く者の立場から経営の意志決定過程への参加機会を担保しつつ、企業のガバナンスの一翼を担うための経営チェックと労働組合の責任を果たすことが必要になっています。このような認識に立って、労使協議会については、 電力総連の「労使交渉・協議に関する指針」を基本に、 事前協議制を含めた運営のルールを明確にするとともに、その機能が有効に働くよう運営の充実を図っていくこととします。
なお、労使協議会の運営にあたっては、 四半期に1回以上、 定期的に開催できるよう労使の確認を行うこととします。
2 賃金改定
(1) 賃金引き上げ
賃金改定については、現行の生活水準を維持することを基本に連合方針を踏まえ、全ての加盟組合は原則として、賃金カーブ維持分と生活維持分を確保することとします。
その上で、労働環境点検活動の結果や個別の事情などを踏まえ、個別賃金水準の引き上げ等に積極的取り組むこととします。
なお、 電力総連内における賃金の相場形成を図る観点から、定昇相当額や個別賃金水準データの情報開示を行うこととします。
【賃金引き上げの組み立て】
@賃金カーブ維持分+A生活維持分 |
+ |
B個別賃金水準の引き上げ等 |
↑ ↑
全ての加盟組合が取り組む事項 個別事情を踏まえ取り組む事項 |
<1>賃金カーブ維持分の確保
賃金カーブ維持分の確保については、次の考え方により取り組むこととします。
( 注 ) 賃金カーブ維持とは、賃金制度が確立している組合は賃金表の維持、賃金制度が確立できていない組合は1歳1年間差の確保と定義づける。
● |
賃金制度・体系を確立している加盟組合は、賃金表を維持することとします。 |
● |
賃金カーブ維持分 ( 1歳1年間差 ) の算定が可能な組合は、1歳1年間差の算出額を要求することとします。 |
● |
賃金カーブ維持分 ( 1歳1年間差 ) の算定が困難な組合は、賃金カーブ維持分として、所定内賃金の2%の額を要求することとします。 |
<2>生活維持分の確保
生活維持分については、消費者物価上昇分に加え、近年の賃金水準低下分の回復に向けて、次の要求基準により取り組むこととします。
[個別賃上げ方式の要求基準]
●高卒30歳・勤続12年の者 2 ,000円以上を基本とします。
●高卒35歳・勤続17年の者 2,400円以上を基本とします。
[平均賃上げ方式の要求基準]
●平均賃上げ方式による場合 2 ,300円以上を基本とします。
<3>個別賃金水準の引き上げ等
労働環境点検活動の結果や個別の事情などを踏まえ、個別賃金水準の引き上げ等に積極的に取り組むこととします。
● 電力関連産業に働く者は、少なくとも社会標準的な生活に必要な生計費を確保する必要があるとの観点から、下表に示したミニマム水準以上の個別賃金水準の確保を目指すこととします。
〈ミニマム水準〉
18歳 |
20歳 |
25歳 |
153,800円 |
162,300円 |
183,600円 |
30歳 |
35歳 |
40歳 |
219,500円 |
277,500円 |
310,700円 |
(注)ミニマム水準におけるデータは人事院の標準生計費から算出
● ミニマム水準を確保したうえで、それぞれの事情を踏まえ、賃金カーブの是正、格差改善など一定の賃金水準の引き上げが必要と判断される場合は、下表の目標水準を参考に、その獲得に向けて取り組むこととします。
〈目標水準〉
|
目標水準1
(電力総連:中位) |
目標水準2
(電力総連:第3四分位) |
高卒 30歳・勤続12年 |
256,100円 |
277,200円 |
高卒 35歳・勤続17年 |
299,200円 |
326,900円 |
(注) 目標水準におけるデータは2006年賃金・一時金・退職金事情調査より算出
(2) 配分交渉の充実
生活の安定確保、公平かつ適正で働きがい・やり甲斐に繋がる配分を目指し、要求案の策定段階から配分交渉を重視した取り組みを行うこととします。
また、近年、多くの加盟組合では、成果を重視した人事・賃金制度への見直しを行っている実態も踏まえ、現行の人事・賃金制度のフォローを行うこととします。
(3) 賃金制度・体系の確立
賃金制度・体系が確立されていない組合は、当該の賃金実態を把握し、人事施策を考慮に入れながら賃金に関する課題を整理のうえ、労使による検討・協議の場を設置して、賃金制度・体系の確立を目指こととします。
特に、安定的な賃金引き上げ原資を確保する観点から、定期昇給のルール化を図っていくこととします。
(4) 最低賃金の労使協定締結
電力関連産業に働く全ての労働者の賃金については、一定の水準を担保するため、次の要求基準に基づき、組合ごとに最低賃金の労使協定を締結することとします。
なお、月額要求を行う場合は、最低賃金要求基準に各組合の月当たり労働時間を掛けて要求を行うこととします。
最低賃金要求基準 時間額850円
(注)最低賃金要求基準は、世帯手当、皆精勤手当、通勤手当、時間外手当を除く。
(5) 初任給引き上げ
個別賃金水準の底上げ、電力関連産業が求める新規採用者の確保の観点から、初任給については、平成18年度初任給に対して900円以上の引き上げに取り組むこととします。
(6) 時間外割増率引き上げ
連合の時間外割増率引上げの取り組みを踏まえ、次の目標到達を目指すこととします。
到達目標 時間外 30%以上 休日 40%以上
3 賞与・一時金
賞与・一時金については、「加盟している全ての組合がクリアする一定の労働条件水準」の考え方を踏まえ、全ての組合が生活給的部分を最低限確保することを基本として、次により要求を行うこととします。
(1) 要求水準
要求水準については、「年間4ヵ月を最低水準」として、過去の妥結実績、企業業績、生産性向上や職場実態などを勘案して、上積みを図った要求を行うこととします。
(2) 冬季分の取り扱い
冬季分については、賃金改定後のベースを使用し、夏季分に準じた扱いとします。
(3) 支給日
支給日については、夏季分は6月上旬、冬季分は 12月上旬とします。
4 仕事と生活の調和が図れる環境の整備
(1) 年間総実労働時間の短縮
電力関連産業で働く者が、心身の健康を保持するとともに、生活時間を確保しつつ、仕事と生活の調和を図っていくためには、労働時間に視点を置くことが不可欠であると考えます。その認識の下、近年の年間総実労働時間の増加傾向に歯止めをかけ、その短縮に向けて次のとおり取り組むこととします。
<1> 労働時間の適正化への取り組み
● |
年間総実労働時間の短縮に向けては、適正な労働時間管理が不可欠であるとの認識に立ち、適正な労働時間管理の充実に向けて、今次の不払い残業防止キャンペーンのフォローを含め改善すべき事項については、労使による話し合いや協議を行い、労使協定化 ( 議事録、覚え書き、確認メモ等を含む ) を図っていくこととします。 なお、労働時間実績について、半期ごとに労使確認を行うこととします。 |
● |
36協定遵守のための時間外労働の基本ルールの徹底、並びに長時間労働を防止する観点に立った36協定 ( 特に特別条項 ) の締結を図っていくこととします。
なお、時間外労働の基本ルールに関しては、労使双方の確認のもとで確立のうえ、36協定の締結内容も含め職場内の周知徹底を図っていくこととします。
( 注 ) 時間外労働の基本ルールとは、「上司の指示に基づく時間外労働」や「日々の労働時間の記録と確認」などをいいます。 |
● |
長時間労働による健康障害防止の観点から、労働安全衛生法の一部改正に基づき、月100時間、又は2ヶ月連続80時間を超える時間外労働を行った場合は、本人の申出の如何に拘わらず、医師による面接指導を行うよう労使協定の締結に取り組むこととします。 |
● |
長時間労働の抑制、休暇取得の促進、労働時間に関する改善など ,労使一体になった取り組みを進めるため、「労働時間に関する労使委員会」の設置・定期開催を行い、労働時間の適正化に向けた環境整備に取り組むこととします。 なお、「労働時間に関する労使委員会」については、安全衛生委員会で代替することも含めて労使確認を行うこととします。 |
<2> 所定外労働時間の削減
全ての加盟組合は、電力総連のクリア水準である2 ,040時間以下の年間総実労働時間の達成を目指し、所定外労働時間の削減に取り組むこととします。
所定外労働時間の削減にあたっては、それぞれの事情を踏まえ、「労働時間に関する労使委員会」等で労使による削減方策を確認して取り組むこととします。
<3> 年次有給休暇の取得向上
全ての加盟組合は、電力総連のクリア水準である年間10日以上の取得達成を目指して、年次有給休暇の取得向上に取り組むこととします。
取得向上にあたっては、昨年実績+1日の年次有給休暇取得を目指すこととし、休暇の連続取得の労使確認、休暇の計画表の作成などに取り組むこととします。
(2) 次世代育成支援対策
次世代育成推進法に基づき、従業員301名以上の企業では、行動計画書提出の確認を行うとともに、厚生労働省が示す「両立指標に関する指針」などを活用して、実施状況などのフォローを行うこととします。
また、従業員300名以下の企業では、同様の努力義務が課せられていることから、法の趣旨に沿って取り組むこととします。
(3) 育児・介護に関わる制度の整備・充実
育児・介護休業法および関連制度の趣旨を踏まえ、法を上回る育児・介護制度の更なる整備・充実に向けて取り組むこととします。また、管理職を含む職場への周知徹底を図り、制度利用の促進を図るため、労使の話し合い・協議を行い、活用を阻害する要因解消を行っていくこととします。併せて、制度利用者の職場復帰後の支援方策、休業取得における代替要員などの職場対応策の確立に向けて取り組むこととします。
5 安心できる生活の確保
(1) 定年退職者継続雇用制度の整備・充実
公的年金の引き上げに伴う65歳までの勤労社会の到来を見据え、現行制度の運用状況をフォローするとともに、各種課題を把握することとします。
その上で、各種課題の解決方策について労使の話し合い・協議を行いながら、 働きがいに繋がり職場活力となる 60歳以降の働き方の制度構築に向けて、継続雇用制度の整備・充実に取り組んでいくこととします。
(2) 退職一時金制度の確立・充実
退職一時金制度が確立されていない組合は、中小企業退職共済制度などを活用して、退職一時金制度の確立を目指した取り組みを進めることとします。
また、制度が確立されている組合は、電力総連のクリア水準である1 ,550万円以上(定年退職時の一時金水準)の確保を目指すこととします。
(3) 災害補償制度の充実
災害補償制度が確立されていない組合がある実態を踏まえ、災害補償制度の確立を目指した取り組みを進めるとともに、被災組合員家族の生活保障を充実するため、業務上災害補償 ( 死亡 ) として 、3 ,500万円以上 ( 有扶者 ) の補償額を目指すこととします。
(4) 安全衛生委員会の運営の充実
職場の安全衛生面が危惧される状況を踏まえ、他企業で発生した労働災害における対策の水平展開など災害撲滅への対応、メンタルヘルスへの対応などの取り組みを進めるため、安全衛生委員会の運営の充実に向けて経営側の対応を求めていくこととします。
6 社会的な課題への対応
(1) 政策制度要求への取り組み
連合の政策制度要求に対しては、働く者が将来に亘って安心・安定した生活の確保、並びに公正な社会の実現を目指して、連合の中核産別としての責任と役割を果たすため、加盟組合の理解を深めつつ、その実現に向けて積極的に参画していくこととします。
(2) パート労働者等の待遇改善への取り組み
パート労働者等の待遇改善は、社会的な課題のみならず、正規社員に及ぼす影響が極めて大きいことから自らの課題と受け止め、加盟組合におけるパート労働者等の雇用や業務の実態を踏まえ、連合方針及び電力総連「パートタイム労働者等の均等待遇に向けた取り組み指針」に基づき、労働条件全般に亘る待遇改善の取り組みを進めることとします。
具体的には、それぞれの実態を踏まえた対応としますが、パート労働者等にも、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働者保護法令が適用されることから、「パートタイム労働法」に基づき、パート労働者等に適用できる就業規則の完全制定に取り組むとともに、労働条件を書面で明示しているか確認を行うこととします。
(3) 裁判員制度に係わる取り扱いの対応
裁判員法により組合員が労働時間中に、裁判員候補として地方裁判所に呼び出しを受けた場合、又は裁判員として地方裁判所に出席する場合は、有給扱いとするとともに、その他の取り扱いに関する労働協約の締結に取り組むこととします。
なお、公民権行使に関して労働協約を締結している組合についても、裁判員法の労働協約上の適用について、労使確認を行うこととします。
(注) 裁判員法は平成16年5月28日に公布され、平成21年5月までに実施されることとなっている。
7 その他
各加盟組合が継続して取り組んでいる上記以外の項目については、従来どおり各加盟組合の決定に委ねることとします。
また、労働環境点検活動において 改善などが必要と判断された場合は、それぞれの事情を踏まえ、個別項目ごとの優先順位を明確にして改善などを図っていくこととします。 |