電力総連
ホーム アクセス サイトマップ ENGLISH 個人情報保護方針
電力総連とは?
私たちの取り組み
私たちの考え
仲間になろう
福祉・共済制度
ふれあいプロジェクト
ふれあい広場
機関紙
関連ウェブサイト

電力総連ホーム > 私たちの取り組み > 春季生活闘争

 2019 春季生活闘争
電力総連2019春季生活闘争 進め方(その3)
検集部会 2019春季生活闘争 妥結結果
電工部会 2019春季生活闘争 妥結結果
電保部会 2019春季生活闘争 妥結結果
電力部会 2019春季生活闘争 妥結結果
電力総連2019春季生活闘争 進め方(その2)
電力総連2019春季生活闘争 進め方(その1)
電力総連2019春季生活闘争方針を決定!



■ 電力総連2019春季生活闘争 進め方(その3)
平成31年4月11日
第3回中央交渉推進委員会
電力総連2019春季生活闘争 進め方(その3)
 電力総連加盟の各組合は、第2回中央交渉推進委員会で確認した「電力総連2019春季生活闘争 進め方(その2)」を踏まえ、4月10日現在で233組合が要求書を提出し、先行する各部会をはじめとする100組合が賃金、賞与・一時金、労働協約改定等のいずれかの項目について解決に至っている。
 賃金については、「経済の自律的成長」実現の観点に加え、生産性の向上や企業の持続的発展に不可欠な人材の維持・確保、格差是正等を根拠として粘り強い交渉を展開した結果、電力総連ミニマム水準への到達に必要な原資を全額確保した組合をはじめ、賃金改定額は昨年を上回る傾向にあるほか、賞与・一時金についても安定支給や組合員の貢献・努力等を背景に交渉を展開し、満額に相当する金額を獲得した組合をはじめ、年間妥結額が昨年を上回る傾向にあるなど、2018春闘に引き続き電力関連産業全体の「底上げ・底支え」、「格差是正・復元」につながる成果となっている。
 後続する加盟組合は、先行する組合が前進感のある解決に至っている状況を踏まえ、構成総連・業種別連絡会・電力総連との緊密な連携のもと、要求趣旨に沿った解決が図れるよう、最後まで粘り強く交渉を展開していくこととする。
1.全体の解決状況
(1)賃金引き上げ
<連合の概況>
 ○ 4月5日に公表した賃金の解決状況によれば、平均賃金方式で回答を引き出した2,276組合のうち、賃金改定分が明確な組合1,440組合の定昇相当分+賃金改定分は加重平均で6,356円(2.14%)、そのうち賃金改定分は加重平均で1,600円(0.56%)となっており、額・率ともに昨年と比べほぼ同水準となっている。
 また、300人未満の中小組合では、賃金改定分が明確な組合783組合の定昇相当分+賃金改定分は加重平均で5,632円(2.19%)、賃金改定分は加重平均1,473円(0.61%)となっており、 額・率ともに昨年と比べほぼ同水準となっている。
<電力総連の概況>
 ○ 4月10日に集計した賃金の解決状況は、解決に至った76組合のうち、賃金改定分を獲得したのは52組合、獲得割合は68.4%となっており、昨年の水準(27/72組合、37.5%)を大きく上回っている。
 ○ 前年比較が可能な72組合における賃金改定分は、加重平均で900円(0.31%)となっており、額・率ともに昨年の水準(473円、0.15%)を大きく上回っている。
 また、300人未満の中小組合30組合における賃金改定分は、加重平均で2,424円(1.06%)となっており、 率・額ともに昨年の水準(629円、0.25%)や全体平均(900円、0.31%)を大きく上回っている。
(2)賞与・一時金
<連合の概況>
 ○ 4月5日に公表した一時金の解決状況によれば、年間月数は加重平均で4.90ヵ月(1,565,936円)となっており、月数で昨年の水準をやや下回っている。
<電力総連の概況>
 ○ 4月10日に集計した賞与・一時金の解決状況は、年間で解決に至った64組合のうち、年間4ヶ月を獲得した組合は56組合、獲得割合は87.5%となっており、昨年の水準(44/61組合、72.1%)を大きく上回っている。
 ○ 前年比較が可能な62組合における年間月数は加重平均で4.43ヵ月(1,534,059円)となっており、月数・額ともに昨年の水準(4.30ヵ月、1,489,209円)を上回っている。
(3)働き方の見直し等
 先行する各部会をはじめとする多くの組合では、長時間労働の是正をはじめとする働き方の見直しや、多様な働き方ができる労働環境の整備などの必要性について労使の共通認識に立つことができている。そのうえで、勤務間インターバル制度の導入、育児・介護・治療が必要な者を対象とした両立支援制度の導入・整備など、各組合の職場実態を踏まえた対応を図っている。
2.今後の進め方
 今後の交渉にあたっては、本日までに先行して解決に至った組合が作り出した前進感 ある交渉環境を最大限活かしつつ、第2回中央交渉推進委員会で確認した「電力総連2019春季生活闘争 進め方(その2)」に基づき、後続する加盟組合、構成総連、電力総連が一丸となって精力的に追い上げを図るとともに、有利解決を前提に、4月中の解決に向けて最大限の取り組みを図るものとする。
以上
【参考】電力総連2019春季生活闘争 進め方(その2)(第2回中央交渉推進委員会より再掲)
<具体的な取り組みについて>
(1)賃金引き上げ
 賃金については、勤続年数に伴う技術・技能の習熟に対応する賃金カーブ維持分の確保はもとより、「経済の自律的成長」などマクロの観点からの所得向上、産業の健全な発展に不可欠な人材の維持・確保や生産性向上等に資する賃金引き上げ、「格差是正」「復元」などによる「底上げ・底支え」の実現のため、要求獲得にこだわり交渉を強化する。
 とりわけ、組織人員が300人以下の加盟組合においては、賃金水準が社会水準を下回る状況にあることをふまえ、「格差是正」に向けた取り組みを強力に推進する。
(2)賞与・一時金
 賞与・一時金については、年間賃金の一部として安定した生活を支える生活給部分として年間4ヵ月を最低水準とし、組合員の経営諸施策への貢献や懸命な努力に報いるため、適正な成果配分の観点に立って、昨年実績からの上積みを図るべく粘り強く交渉を展開する。
(3)仕事と私生活の調和が図れる環境の整備
 年間総実労働時間の短縮は、心身の健康の保持・増進や、家庭における役割、地域社会とのつながりなど個々人の生活と仕事の調和を実現するのみならず、多様な人材が活躍できる環境整備のために欠くことのできない重要な取り組みであることから、具体的成果が得られるよう交渉を強化する。とりわけ、長時間労働は、過重労働による体調不良やメンタルヘルス不調、過労死といった問題を引き起こす要因となることから、労働基準法改正等を見据えた先行的な取り組みを積極的に推進する。
 仕事と育児・介護・治療の両立支援制度の整備・充実については、貴重な技術・技能を有する人材が育児・介護・病気治療を理由に離職することを防ぎ、働き続けることができる職場環境を構築することで、本人だけでなく、企業の持続的な成長に資することをふまえ、前進が図られるよう交渉を強化する。
(4)誰もが安心できる労働条件や労働環境の確保
 産業全体で人材の維持・確保が重要課題となるなか、高年齢者、女性、障がい者が仕事にやりがい・働きがいを持つとともに、安心して働き続けることができる労働条件や労働環境の確保に向けて交渉を強化する。
 退職一時金および災害補償制度の整備・充実の取り組みにおいては、電力関連産業に働く者に課せられた社会的使命を果たし続けていることに適切に報いることや、組合員とその家族の安心・安定につなげる観点から、前進が図られるよう交渉を強化する。
(5)非正規労働者の待遇改善
 パートタイム労働者をはじめとする非正規労働者の待遇改善の取り組みにおいては、労働条件等について実態把握を行い、当該者および労使の三者で共通認識を図るとともに、労働契約法等の法改正に適切に対応するよう取り組む。そのうえで、同一労働・同一賃金に向けた法改正が予定されていること等をふまえ、待遇改善に向け前進が図られるよう交渉を強化する。
<交渉推進について>
(1)電力総連
 電力総連は、相場形成および加盟組合に広く波及効果を及ぼす観点から、各部会や加盟組合の交渉状況について、各構成総連と共有を図ることとし、連合大の春闘に関する方針や情勢についても適時情報提供を行っていく。
 また、加盟組合の交渉が有利に進められるよう、引き続き賃金実態把握・分析や経営分析の支援を行う。
(2)構成総連
 構成総連は、交渉推進委員会を適宜開催し、統一交渉ゾーンの設定や時宜を得た効果的なオルグの実施など、加盟組合の早期かつ有利解決に向けて交渉促進を図っていく。
 また、交渉が難航している加盟組合に対しては、電力総連と連携しながら個別対応も含め支援を行う。
(3)加盟組合
 加盟組合は、構成総連や業種別連絡会と連携を図り、先行する組合や同業他社の交渉状況について把握するとともに、統一交渉ゾーンを活かしながら、効果的な交渉日程を配置するなど、要求の趣旨に沿った解決が図られるよう精力的に交渉を展開する。



○ 検集部会 2019春季生活闘争 妥結結果

組合名 職種 賃金・手数料
改定額
賞与・一時金
(年間総額)
妥結日
ほくでん
サービス
パートナー社員 0円 3.60ヶ月 3月26日
社員 3,690円 1,207,000円
東北 検針 183円 553,000円 3月23日
集金 270円 914,300円
東京 A検針 年収維持 3月14日
Aエリアサービス 0円
中部 検針 0円 688,500円 3月14日
嘱託 300円 1,340,100円
北陸 検針 4,874円 241,300円 3月28日
集金 0円 413,103円
中国 検針1号 0円 301,000円 3月28日
検針2号
検針A
特号 0円 320,700円
特号(再)
四国 検針 0円 621,700円 3月27日
集金 0円 912,200円
九州 特定集金 560円 1,285,648円 3月22日
検針1号 560円 1,264,750円
検針2号 1日28円
(14日/月)
810,984円




○ 電工部会 2019春季生活闘争 妥結結果

  妥結結果 妥結日
賃金改定・改善 賞与(年間)
北海電気工事 1,000円 1,240,000円 3月22日
ユアテック 0円 1,500,000円 3月22日
関電工 0円 1,710,000円 3月22日
北陸電気工事 平均3,000円 業績連動方式 3月22日
トーエネック 賃金改定は行わない 1,680,000円 3月22日
シーテック 賃金改定は行わない 4.3ヶ月 3月22日
きんでん 0円 業績連動方式 3月22日
中電工 1,000円 業績連動方式 3月22日
四電工 1,500円
(組合員一人平均)
業績連動方式 3月22日
九電工 新人事・賃金・評価制度改定に
伴い協議・決定する。
1,700,000円 3月22日




○ 電保部会 2019春季生活闘争 妥結結果

  妥結結果 妥結日
賃金改定 賞与(夏季支給額)
北海道 1,000円 793,700円 3月19日
東北 1,000円 815,000円 3月19日
関東 1,000円 920,000円 3月19日
中部 500円 810,900円 3月19日
北陸 1,000円 業績連動 3月19日
関西 1,000円 801,000円 3月19日
中国 1,000円 800,000円 3月19日
四国 1,000円 752,000円 3月19日
九州 1,000円
(改善500円含む)
840,000円 3月19日
沖縄 0円 544,800円 3月19日




○ 電力部会 2019春季生活闘争 妥結結果

  妥結結果 妥結日
賃金 賞与(年間総額)
北海道電力 賃金カーブ維持分の確保 3.68ヵ月 3月14日
東北電力 賃金改善 600円程度 1,483,000円 3月14日
東京電力 年収水準は現状維持
一時金60,000円/1人(A,B社員)
3月14日
中部電力 賃金改定 1,000円
(若年層を中心とした改定)
1,628,000円 3月14日
北陸電力 1,094,000円 3月14日
関西電力 賃金改定 1,500円 1,692,000円 3月14日
中国電力 賃金カーブ維持分の確保
賃金改定には応じられない
3.39ヵ月 3月14日
四国電力 賃金改善 1,000円 1,580,000円 3月14日
九州電力 賃金改善 700円 4.02ヵ月 3月14日
沖縄電力 賃金改善 500円 1,498,000円 3月14日
日本原電 昨年ベースの水準で妥結 3月14日
電源開発 賃金改定 1,000円 業績連動 3月14日
日本原燃 賃金改善 500円 1,147,000円 3月14日




■電力総連2019春季生活闘争 進め方(その2)
平成31年3月5日
第2回中央交渉推進委員会
電力総連2019春季生活闘争 進め方(その2)
 電力総連加盟の各組合は、第1回中央交渉推進委員会で確認した「電力総連2019春季生活闘争の進め方(その1)」をふまえ、その多くが2月19日に要求を行って以降、構成総連・電力総連と連携を図りながら精力的な交渉を展開している。
 今次闘争においては、電力関連産業を将来にわたり健全に発展させていくため、電力総連に働く者すべての経済的・社会的地位の向上を図りつつ、組合員とその家族の安定・安心、やりがい・働きがいを実感できる魅力ある産業の構築に向けた闘争を進めていく必要がある。
 そのため、個別労使を取り巻く環境はもとより、経済の好循環の実現に向け労使に求められる役割と責任等もふまえ、経営側に、賃金引き上げをはじめとする「人への投資」を積極的に促すとともに、職場を熟知する労使による主体的な働き方の見直しを進めることで、電力関連産業に働く者の明日への活力につなげていくべきである。
 今後の交渉にあたっては、こうした基本認識を再度共有するとともに、連合の闘い方をふまえ、加盟組合・構成総連・部会・電力総連が一体となり、要求の趣旨に沿った解決を図れるよう、力強く交渉を推進していくこととする。
1.要求書提出および申し入れについて
 要求書等の提出に至っていない組合は、構成総連と連携を図り、「電力総連2019春季生活闘争方針」をふまえ、早期交渉を念頭に遅くとも3月末までに要求書等を提出する。
2.具体的な取り組みについて
(1)賃金引き上げ
 賃金については、勤続に伴う技術・技能の習熟に対応する賃金カーブ維持分の確保はもとより、「経済の自律的成長」などマクロの観点からの所得向上、産業の健全な発展に不可欠な人材の維持・確保や生産性向上等に資する賃金引き上げ、「格差是正」「復元」などによる「底上げ・底支え」の実現のため、要求獲得にこだわり交渉を強化する。
 とりわけ、組織人員が300人以下の加盟組合においては、「格差是正」に向けた取り組みをいっそう強力に推進する。
(2)賞与・一時金
 賞与・一時金については、年間賃金の一部として安定した生活を支える生活給部分として年間4ヵ月を最低水準とし、組合員の経営諸施策への貢献や懸命な努力に報いるため、適正な成果配分の観点に立って、昨年実績からの上積みを図るべく粘り強く交渉を展開する。
(3)仕事と私生活の調和が図れる環境の整備
 年間総実労働時間の短縮は、心身の健康の保持・増進や、家庭における役割、地域社会とのつながりなど個々人の生活と仕事の調和を実現するのみならず、多様な人材が活躍できる環境整備のために欠くことのできない重要な取り組みであることから、具体的成果が得られるよう交渉を強化する。とりわけ、長時間労働は、過重労働による体調不良やメンタルヘルス不調、過労死といった問題を引き起こす要因となることから、改正労働基準法に適切に対応することはもとより、長時間労働是正に向けた取り組みを強力に推進する。
 仕事と育児・介護・治療の両立支援制度の整備・充実については、貴重な技術・技能を有する人材が育児・介護・病気治療を理由に離職することを防ぎ、働き続けることができる職場環境を構築することが、本人だけでなく、企業の持続的な成長に資することをふまえ、前進が図られるよう交渉を強化する。
(4)誰もが安心できる労働条件や労働環境の確保
 産業全体で人材の維持・確保が重要課題となるなか、高年齢者、女性、障がい者が仕事にやりがい・働きがいを持つとともに、安心して働き続けることができる労働条件や労働環境の確保に向けて交渉を強化する。
 退職一時金および災害補償制度の整備・充実の取り組みにおいては、電力関連産業に働く者に課せられた社会的使命を果たし続けていることに適切に報いることや、組合員とその家族の安心・安定につなげる観点から、前進が図られるよう交渉を強化する。
(5)非正規労働者の待遇改善
 パートタイム労働者をはじめとする非正規労働者の待遇改善の取り組みにおいては、労働条件等について実態把握を行い、当該者および労使の三者で共通認識を図るとともに、同一労働・同一賃金に向けた法改正等をふまえ、待遇改善に向け前進が図られるよう交渉を強化する。
3.交渉推進について
(1)電力総連
 電力総連は、加盟組合に広く波及効果を及ぼす観点から、各部会や加盟組合の交渉状況や妥結内容について、各構成総連との十分な連携のもと共有を図ることとし、連合大の春闘に関する方針や情勢についても適時情報提供を行っていく。
 また、加盟組合の交渉が有利に進められるよう、賃金実態把握・分析や経営分析の支援を行うとともに、労働協約改定等の要求に関連し、他産別の制度内容等の情報収集・共有に努める。
(2)構成総連
 構成総連は、交渉推進委員会を適宜開催し、統一交渉ゾーンの設定や時宜を得た効果的なオルグの実施など、加盟組合の早期かつ有利解決に向けて交渉促進を図っていく。
 また、交渉が難航している加盟組合に対しては、電力総連と連携しながら個別対応も含め支援を行う。
(3)加盟組合
 加盟組合は、構成総連や業種別連絡会と連携を図り、先行する組合や同業他社の交渉状況について把握するとともに、統一交渉ゾーンを活かしながら、効果的な交渉日程を配置するなど、要求の趣旨に沿った解決が図られるよう精力的に交渉を展開する。
4.今後の日程について
(1)解決時期
 3月中の解決をめざして最大限の取り組みを行う。
 また、3月中の解決が難しい場合であっても、有利解決を前提に、遅くとも4月中の解決に向けて鋭意交渉を強化する。
(2)会議開催
 第1回交渉連絡責任者会議を3月28日(木)、第3回中央交渉推進委員会を4月11日(木)に開催する。
以上

■ 電力総連2019春季生活闘争 進め方(その1)
平成31年2月14日
第1回中央交渉推進委員会
電力総連2019春季生活闘争 進め方(その1)
 電力関連産業を将来にわたり健全に発展させていくためには、短期・中長期的な観点から、電力関連産業に働く者すべての経済的・社会的地位の向上を図るとともに、組合員とその家族の生活の安定・安心、やりがい・働きがいを実感できる魅力ある産業の構築に向けた取り組みを継続していくことが必要なことはいうまでもない。
 電力総連2019春季生活闘争は、雇用の維持拡大、労使の協力と協議、成果の公正な分配を柱とした「生産性三原則」のもと、健全な産業の発展の基盤となる人材の維持・確保、技術・技能の維持・継承等の着実な実現に向け、賃金引き上げをはじめとする「人への投資」を促すとともに、職場を熟知する労働組合による働く者のための働き方の見直しを進めることで、明日への活力につなげていくことが重要との認識のもと、電力総連2019春季生活闘争方針に基づき、加盟組合・構成総連・部会・電力総連の連携を強化し、以下のとおり交渉を推進していくこととする。

1.事前準備

構成総連、部会および加盟組合は、電力総連2019春季生活闘争方針の主旨に沿って、要求書の提出や申し入れおよび本格的交渉に向けた事前準備に万全を期す。

加えて、早期かつ有利な解決をめざして精力的な交渉が展開できるよう交渉体制を確立する。

2.要求書提出および申し入れ

要求書の提出および申し入れについては、平成31年2月19日(火)に一斉実施する。ただし、事情により一斉要求への対応が難しい加盟組合は、早期交渉を念頭に遅くとも3月末までに実施する。

3.交渉推進

〇 電力総連大の連携や情報の共有ならびに交渉推進の強化を図るため、交渉推進体制を【別紙】のとおり確立し、加盟組合の交渉を支援する。

〇 電力総連は、中小加盟組合をはじめとする各加盟組合の交渉を有利に進められるよう、継続的な賃金実態把握・分析および経営分析の支援を行うとともに、労使交渉の主張点などについて適宜情報発信を行う。加えて、構成総連との連携のもと、各加盟組合の妥結内容について時宜を得た発信を行うことで電力総連内の相乗効果発揮に努める。

〇 構成総連は、全体情勢の共有や統一交渉ゾーンの設定、時宜を得た効果的なオルグの実施など、加盟組合の早期かつ有利な解決に向けた支援を行う。

〇 加盟組合は、構成総連が設定する統一交渉ゾーンを念頭に交渉日程を組み立て、要求趣旨に沿った解決が図られるよう交渉の促進を図る。

4.当面の日程

第2回中央交渉推進委員会を3月5日(火)16時から開催することとし、それ以降の日程については、加盟組合の交渉状況、連合や他産別の動向などを総合勘案して決定する。

5.その他

〇 春季生活闘争に関する情報については、適宜「2019春季生活闘争情報」により発信する。

〇 連合のインフラ・公益共闘連絡会議との連携を図り、連合の中核産別としての役割を踏まえ、加盟組合の底上げに資する取り組みを進める。

以 上




■ 電力総連2019春季生活闘争方針を決定!(2019.2.14)

 電力総連は、2月14日(木)に東京都内において、2018年度第1回中央委員会を開催し、電力総連2019春季生活闘争の方針を決定した。
 今次春季生活闘争においては、連合方針や取り巻く情勢等を踏まえ、「経済の自律的成長」の実現などマクロの観点からの所得の向上や、電力関連産業の健全な発展に不可欠な人材の維持・確保、経営効率化への貢献・努力に報いること等を目的に、月例賃金の引き上げに継続して取り組み、電力関連産業に働く者の「底上げ・底支え」実現をめざす。とりわけ、組織人員が300人以下の加盟組合における賃金水準は社会水準を下回る状況にあることから、賃金水準にこだわり、電力総連ミニマム水準や目標水準等の実現に向けた取り組みを強化することで、「格差是正」を積極的に推進する。
 あわせて、2018春季生活闘争と同様に働く者の立場にたった働き方の見直しに取り組み、法改正に適切に対応することはもとより、企業規模・業種を問わず、すべての加盟組合において、過労死・過労自殺をはじめとする健康障害の未然防止や生活時間の確保等の観点から、長時間労働是正への取り組みをいっそう強力に推進すし、組合員とその家族の生活の安定・安心、やりがい・働きがいを実感できる魅力ある産業をめざし、電力総連統一要求日(2019年2月19日)に向けて要求準備を進めていくこととする。
 また、同日、第4回三役会議にて中央交渉推進委員会の設置を確認し、引き続き第1回中央交渉推進委員会において、「電力総連2019春季生活闘争 進め方(その1)」を確認した。


岸本会長あいさつ


議長を務める九州電力総連 亀崎中央委員


2019春季生活闘争方針について提起する 山脇労働政策局長


2019春季生活闘争が満場一致で承認された


岸本会長(左)と浜野よしふみ参議院議員(中)と小林まさお参議院議員(右)



平成31年2月14日
第1回中央委員会
電力総連2019春季生活闘争方針
I. はじめに

連合は、2019春季生活闘争方針において、少子高齢化や人口減少の進展に伴う生産年齢人口の減少による人手不足感の高まりや、第4次産業革命をはじめとする技術革新の加速化への対応などの変化が待ち受けるなかにあって、将来にわたって持続可能な社会を実現していくためには、「人的投資の促進」「ディーセント・ワークの実現」「包摂的な社会の構築」「経済の自律的成長」が必要との認識を示している。
 これまでの間、「底上げ・底支え」「格差是正」に向けた取り組みを進めた結果、賃上げ獲得組合が広がるとともに、大手追従・準拠からの構造転換に向けた運動の浸透などの成果を上げてきたものの、企業規模間・雇用形態間などの格差は依然として縮まっていないとしている。
 2017闘争から掲げてきた「経済の自律的成長」等を実現するためには、すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」の実現等が不可欠としている。また、働きの価値に見合った処遇が担保される社会を実現していくことが重要との認識のもと、賃金引き上げの流れを継続・定着させるとともに、足下の最大の課題である中小労組や非正規労働者の賃金を「働きの価値に見合った水準」へと引き上げていくとの方向性を示している。そのうえで、2019闘争はその足がかりを築いていく年と位置づけ、賃金の「上げ幅」のみならず「賃金水準」を追求する闘争を強化するとしている。
 あわせて、人手不足が深刻さを増し、働き方改革関連法が成立したなか、個別企業労使にとって人材の確保や人材育成に向けた職場の基盤づくりが従来以上に重要となっているとの認識のもと、長時間労働を是正し、正規・非正規を問わず、個々人の状況やニーズにあった多様な働き方を選択できる仕組みを整えるとともに、それぞれの能力の高まりによって生み出された労働の質的向上分にふさわしい処遇を確保することが必要としている。加えて、働き方を含めた「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」に取り組むことで、社会全体の生産性向上を促していくとしている。
 また、闘争を進めるにあたっては、「底上げ・底支え」「格差是正」の実現に重点を置いた闘争をいっそう展開するために、従前の中小共闘方針を全体方針に包含するなど、中小共闘の枠組みを発展的に解消し、連合本部・構成組織・地方連合は重層的かつ総がかりでの共闘体制を構築するとしている。
 さらには、生産性三原則に基づく労使の取り組みの成果を組織内外に広く波及させていくため、賃金決定メカニズムとしての春季生活闘争の構造の再構築に向けた検討に着手するとしている。

電力総連2019春季生活闘争では、連合2019闘争方針や取り巻く情勢等を踏まえ、「経済の自律的成長」の実現などマクロの観点からの所得の向上や、電力関連産業の健全な発展に不可欠な人材の維持・確保、経営効率化への貢献・努力に報いること等を目的に、月例賃金の引き上げに継続して取り組み、電力関連産業に働く者の「底上げ・底支え」実現をめざす。とりわけ、組織人員が300人以下の加盟組合における賃金水準は社会水準を下回る状況にあることから、電力関連産業の健全な発展に不可欠な人材の維持・確保、技術・技能の維持継承にも影響を及ぼすことのないよう、賃金水準にこだわり、電力総連ミニマム水準や目標水準等の実現に向けた取り組みを強化することで、「格差是正」を積極的に推進する。
 あわせて、昨春闘同様、働く者の立場にたった働き方の見直しを年間賃金の引き上げとともに取り組みの柱と位置づけ、法改正に適切に対応することはもとより、企業規模・業種を問わず、すべての加盟組合において、過労死・過労自殺をはじめとする健康障害の未然防止や生活時間の確保等の観点から、長時間労働是正への取り組みをいっそう強力に推進するとともに、育児・介護・治療といったライフイベントに応じた多様な働き方の実現など、仕事と私生活の調和が図られる環境の整備、正社員と非正規労働者の均等・均衡待遇に向けた取り組み等をさらに進める。
 取り組みにあたっては、組合員とその家族の生活の安定・安心、やりがい・働きがいを実感できる魅力ある産業の実現に向け、加盟組合・構成総連・電力総連が有機的な連携を図ることで、相乗効果を発揮しうるよう、組織の総合力を最大限活かした取り組みを進めていくこととする。加えて、連合2019春季生活闘争における各種共闘との連携や2020闘争以降を見据えた春闘構造の再構築に向けた検討経過を含め連合の中核産別としての役割と責任を踏まえた対応を図っていくものとする。

II.経済社会の情勢

○ 日本経済全般の動向については、1月の月例経済報告(1月29日内閣府公表)において、景気は緩やかに回復しているとし、先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されるとしている。

○ 2018年7〜9月期の四半期別の実質GDP成長率(12月10日内閣府公表、2次速報値)は前期比△0.6%(年率換算△2.5%)となっている。マイナス成長の要因として相次いだ自然災害が生産や消費を鈍化させたとみられている。民間39機関(1月16日公表)によれば、10〜12月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.25%まで回復すると予測している。
 また、2018年度の実質GDP成長率については、日本銀行(1月23日公表)が+0.9%としているほか、民間39機関平均(1月16日公表)は+0.69%と予測している。

○ 企業の収益については、1月の月例経済報告(1月29日内閣府公表)によれば、企業収益が改善するとともに、業況判断はおおむね横ばいとなっている。

○ 物価については、1月の消費者物価指数(1月18日総務省公表)が、総合指数で前年同月比0.3%上昇、生鮮食品を除く総合指数で前年同期比0.7%上昇している。
 また、2018年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)に関しては、日本銀行が+0.8%(1月23日公表)、民間39機関平均(1月16日公表)が+0.85%と予測している。
 なお、月例経済報告においては引き続き日本銀行に対して経済・物価情勢を踏まえつつ2%の物価安定目標を実現することを期待するとしている。そのほか、2019年10月に予定されている消費税増税(8%から10%)の動向にも注視する必要がある。

○ 雇用情勢については、12月の完全失業率(2月1日総務省公表)が2.4%となり、引き続き完全雇用の水準にある。また、2018年度の完全失業率に関しては、民間39機関平均(1月16日公表)が2.39%と予測している。
 12月の有効求人倍率(2月1日厚生労働省公表)は、1.63倍となっている。あわせてすべての都道府県で1倍を超えるなど、着実に雇用情勢の改善が進んでいる。
 また、日銀短観(12月14日日本銀行公表)によれば、雇用人員の過不足感を表す「雇用人員D.I」は全規模全産業合計の「最近」が△35、「先行き」が△38であり、人手不足が顕著になっているが、とりわけ中小企業全産業計においては、「最近」が△39、「先行き」が△43となっており、前回公表結果と比べていっそう深刻となっている。

○ 政府は、東日本大震災からの復興・創生および熊本地震からの復旧・復興に向けて取り組むとともに、デフレからの脱却を確実なものとし、経済再生と財政健全化の双方を同時に実現していくとしている。このため、「経済財政運営と改革の基本方針2018」、「未来投資戦略2018」等を着実に実行するとしている。
 また、第196回通常国会において時間外労働の上限規制を含む働き方改革関連法(2018年7月6日公布)が成立し、労働政策審議会において関係省令等が継続的に審議され、順次公布されている。

III.電力関連産業を取り巻く情勢

1.経営環境

○ 電力関連産業を取り巻く情勢については、電力システム改革に伴い2016年4月から実施された電力小売全面自由化に加え、2017年4月からのガス小売全面自由化により、旧一般電気事業者や旧一般ガス事業者にとどまらず、新規参入事業者を含むエネルギー関連企業間の競争はいっそう激化している。電力関連産業各社は、競争時代を勝ち抜くために、様々な経営効率化方策を実施しているほか、グループ企業との役割分担見直しを含めグループ一体となった取り組みを進めている。さらには一部においてグループの枠を越えた企業の再編も行われている。

○ エネルギー政策を巡る諸課題については、エネルギーミックスの実現に向けた諸施策への対応、競争環境下における原子力事業の環境整備に関する動向、2050年に向けた温室効果ガス削減の長期目標のあり方に伴う諸課題をはじめとして、電力関連産業の事業運営や労働環境、雇用に影響を与える可能性のある課題が山積している。
 スマートメーターをめぐる状況については遅くとも2024年度までに導入を完了する予定となっていることなどから、これらに関連する業務に従事する者の雇用・職域・労働条件の確保に向けた取り組みが課題となっている。
 また、産業界全体に目を向ければ、第4次産業革命といわれるIoT(Internet of Things、モノのインターネット)、ビッグデータ活用、人工知能(AI)等の技術革新によって、事業環境や働き方が劇的に変化する可能性もあり、それらの動向も引き続き注視していく必要がある。

○ 原子力発電所の再稼働については、2019年1月現在、加圧水型原子炉(PWR)プラント9基が再稼働を果たしているほか、日本原子力発電東海第二発電所が運転開始後40年を迎える沸騰水型原子炉(BWR)プラントで初となる原子炉設置変更許可を受けるなど、再稼働に向けた取り組みが着実に進められている。一方で、複数の原子力関連施設における新規制基準に係る適合性審査の長期化などにより依然として再稼働の動向は不透明な状況となっている。また、再稼働中のプラントの運転差し止めを求めた住民の仮処分申請は一部が棄却されたものの、再稼働している発電所についても依然として司法リスクを抱えている。

○ 電力関連産業各社の経営環境については、民間設備投資の持ち直しの動きに加え、本格的な震災復興や東京オリンピック・パラリンピック関連需要などに伴い受注量が増加傾向で推移するなか、堅調な業種・地域がある一方で、新規事業者の参入をはじめとして競争環境の激化や労働力不足等に起因する労務費の増加・受注抑制などにより、取り巻く環境が厳しさを増している業種・地域もあり、まだら模様となっている。また、経営基盤強化を目的とした、さらなる経営効率化は各社共通の課題であり、協力会社を含めたグループ企業全体の総合力発揮や収益力強化を図る取り組みは継続していくと想定される。

○ 電力各社の第3四半期連結決算については、ほとんどの会社で販売電力量は前年同期と比べて減少あるいは横ばいとなったものの、売上高は燃料費調整制度の影響などにより、ほとんどの会社が対前年同期比で増加している。経常損益については、多くの会社が燃料費の増加や購入電力料の増加などから対前年同期比で減益となったほか、一部の会社では経営全般にわたる徹底した効率化に継続的に取り組んだことなどから対前年同期比で増益となった。また、通期の業績見通しについては、すべての電力会社で黒字となる見通しである。

2.職場の状況

○ 電力システム改革に伴う電力小売全面自由化やガス小売全面自由化によるエネルギー産業間の競争進展をはじめとして、電力関連産業全般において新たな競争時代を迎えているほか、送配電部門の法的分離への対応や東京オリンピック・パラリンピック需要などに伴う受注量増加などの事業環境のもとで、職場組合員は、業務の高度化・多様化により質・量ともに業務負担がいっそう増加するなかにあって、慢性的な要員不足にもかかわらず、直面する経営諸課題の解決に向け懸命に取り組むとともに、競争力強化に向け、グループ一体となったさらなる経営効率化に懸命に取り組んでいる。

○ 「平成30年7月豪雨」や「北海道胆振東部地震」などをはじめとして例年になく大規模自然災害が発生するなか、各種災害からの早期復旧をはじめとする昼夜を分かたぬ安定供給確保の取り組みはもとより、原子力関連施設の新規制基準への対応、火力発電等の電源脱落リスクや太陽光発電等の自然変動電源の急速な拡大に伴う対応など山積する喫緊の課題に対し、極めて高い緊張感のもと、自らの作業安全の確保を大前提に、電力関連産業に働く仲間が一丸となって懸命な取り組みを続けている。

○ 一方で、労働力人口の減少や技術・技能を有する者の流出に伴う労働力不足はいっそう厳しさを増しており、協力企業を含め電力関連産業の多くの企業において労働力確保が困難な状況が続いている。加えて、長時間労働の是正等に伴う労働時間の短縮が進展すれば、労働投入量はさらに減少することから、電力関連産業の基盤となる人材の確保・育成はいっそう重要性を増している。とりわけ、若年労働者の減少は技術・技能の維持・継承や職場内の活性化にも影響を及ぼしかねない喫緊の課題となっている。

IV.連合の方針(抜粋)

1.2019春季生活闘争の取り組み内容

(1)賃金の「上げ幅」のみならず「賃金水準」を追求する闘争の強化

① 「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みの継続と賃金の絶対値の重視

 現時点の日本経済の先行きは、通商問題の動向や地政学的リスク、相次いだ自然災害の被害とその復旧・復興コスト等、国内・海外要因の影響を受けつつも、緩やかな成長が見込まれており、企業収益は過去最高を更新している。一方、労働分配率は低下を続け、実質賃金も横ばいとなっており、個人消費については上向き感が見られるものの、回復に向けた勢いは依然として見られない。
 働く者のモチベーションを維持・向上させていくためには「人への投資」が不可欠であり、すべての企業労使は日本経済の一端を担うという社会的役割と責任を意識し、すべての働く者の労働条件の改善をはからなければならない。
 GDPの6割を占める個人消費が回復しなければ、「経済の自律的成長」という社会目標は達成され得ない。
 したがって、2019春季生活闘争においても、月例賃金の引き上げにこだわり、賃上げの流れを継続・定着させる。とりわけ、未だ届いていない中小組合や非正規労働者の賃金の「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みの実効性を高めるためにも、働きの価値に見合った賃金の絶対額にこだわり、名目賃金の到達目標の実現と最低到達水準の確保、すなわち「賃金水準の追求」に取り組んでいく。加えて、企業内最低賃金協定の締結拡大や水準の引き上げ、適用労働者の拡大によって、法定最低賃金の改善に波及させ、「誰もが時給1,000円」の実現をはかることが重要である。
 その上で、賃上げ要求については、社会全体に賃上げを促す観点とそれぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みを強化する観点を踏まえ、2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする。

② 賃金の実態把握と相場形成に向けて

 中小組合の賃上げと格差是正、非正規労働者の均等待遇、男女間賃金格差の是正を実現していくためには、賃金実態の把握と賃金制度の確立が不可欠である。なお、格差是正の取り組みの実効性を担保していくには、より多くの組合が要求根拠を明確にして要求することが肝要であると同時に、「大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動」の継続と定着が必要であることに留意する。
 構成組織は、加盟組合の個別賃金データを収集し、各組合の賃金実態把握、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を労使で確認した上で、「地域ミニマム運動」を活用した最低到達水準の確保と到達目標水準の確認などに向けた支援を強化するとともに、連合「地域ミニマム運動」への参画を通じて、地域における賃金相場の形成に積極的に参画していく。
 各組合は、組合員の賃金実態調査をもとに、「賃金水準や賃金カーブのゆがみやひずみの有無」「構成組織が設定する最低到達水準あるいは到達目標水準との差の有無」などを確認し、目標水準を明確にする。その上で、賃金カーブ維持相当分を含め賃金改善に必要な総原資の確保のみならず、その配分についても要求・交渉を進める。

③ 取引の適正化の推進

 中小企業の賃上げ原資確保には取引の適正化の推進が不可欠であり、「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」が必要であることを、職場労使、経営者団体とともに社会全体に訴えていく。取引の適正化の推進について、中小企業庁が示す「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」 の共有や連合が作成する「公正な取引を実現しよう」等のパンフレットを活用し、企業内労使の建設的な議論を進めるとともに、中小企業経営者団体および行政機関と連携し、社会全体に対する情報発信による世論形成をはかる。
 加えて、働く者は同時に消費者でもある。一人ひとりが倫理的な消費行動を日々実践していくことも持続的な社会に向けた大切な営みであり、消費者教育の推進とともに、働く者の立場から社会に呼びかけていく。

(2)「すべての労働者の立場にたった働き方」実現への取り組み

 人手不足が深刻さを増し、働き方改革関連法が成立した中、個別企業労使にとって「人材の確保・定着」と「人材育成」に職場の基盤整備が従来以上に重要課題となる。特に、長時間労働の是正や「同一労働同一賃金」の実現は産業実態に適合した取り組みが必要となるため、産業全体として実現したい姿を共有した上で進めることが重要である。またその際には、企業規模や特定の業種によって取り組みの濃淡や負担感の偏在が生じないようにする必要がある。
 あわせて、非正規労働者の雇用安定、安心して育児・介護・治療と仕事の両立を可能とするなどのワーク・ライフ・バランス実現に向けた取り組みも必要である。

2.具体的な要求項目

(1)賃上げ要求

① 月例賃金

〇 すべての組合は月例賃金にこだわり、賃金の引き上げをめざす。要求の組み立ては、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を確保した上で、名目賃金の到達目標の実現と最低到達水準の確保、すなわち「賃金水準の追求」にこだわる内容とする。

〇 構成組織はそれぞれの産業ごとの個別銘柄の最低到達水準・到達目標水準を明示し、社会的共有に努める。組合は、組合員の個別賃金実態を把握し、賃金水準や賃金カーブを精査してゆがみや格差の有無などを確認した上で、これを改善する取り組みを行う。

〇 賃金制度が未整備の組合は、構成組織の指導のもと、制度の確立・整備に向けた取り組みを強化する。

〇 月給制の非正規労働者の賃金については、正社員との均等待遇の観点から改善を求める。

② 規模間格差の是正(中小組合の社会横断的水準の確保)

 企業数の99.7%を占め、全従業員の約7割を雇用する中小企業の経営基盤の安定とそこで働く労働者の労働条件の向上及び人材の確保・育成は、日本経済の健全かつ持続的な発展にとって不可欠である。中小組合の賃金の「底上げ・底支え」「格差是正」を進める観点からも、月例賃金の引き上げにこだわり、働きの価値に見合った賃金水準の確保に向けた取り組みを強化する。

〇 賃金の絶対額を重視した月例賃金の引き上げ
 すべての中小組合は、賃金カーブ維持相当分(1年・1歳間差)を確保した上で、自組合の賃金と社会横断的水準を確保するための指標とを比較し、その水準の到達に必要な額を加えた総額で賃金引き上げを求める。また、獲得した賃金改善原資の各賃金項目への配分等にも積極的に関与する。

 賃金実態が把握できないなどの事情がある場合は、連合加盟中小組合の平均賃金水準(約25万円)と賃金カーブ維持分(1年・1歳間差)をベースとして組み立て、連合加盟組合平均賃金水準(約30万円)との格差を解消するために必要な額を加えて、引き上げ要求を設定する。
 すなわち、連合加盟組合平均賃金水準の2%相当額との差額を上乗せした金額6,000円を賃上げ目標金額とし、賃金カーブ維持分4,500円 を加え、総額10,500円以上を目安に賃金の引き上げを求める。

〇 賃金カーブ維持分の確保
 賃金カーブを維持することは、労働力の価値の保障により勤労意欲を維持する役割を果たすと同時に、生活水準保障でもあり、必ずこれを確保する。
 賃金カーブ維持には定期昇給制度が重要な役割を果たす。定期昇給制度がない組合は、人事・賃金制度の確立を視野に入れ、労使での検討委員会などを設置して協議を進めつつ、当面は定期昇給制度の確立に取り組む。構成組織と地方連合会は連携してこれらの支援を行う。

③ 雇用形態間格差の是正(非正規労働者の社会横断的水準の確保)

 時給引き上げの取り組みは、非正規労働者の労働諸条件の「底上げ・底支え」「格差是正」と正規労働者との均等待遇の実現をはかる観点から、以下の取り組みをはかる。

〇 高卒初任給等との均等待遇を重視し、時給1,050円※を確保する。

 ※連合2018「賃金・一時金・退職金調査」速報値より主要組合の高卒初任給の平均額に2%分を上乗せした額(172,500円)を厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の所定内実労働時間数全国平均(165時間)で除し、時給換算したもの

〇 すでに時給1,050円超の場合は、正社員との均等待遇の観点から改善を求める。

〇 「都道府県別リビングウェイジ」を上回る水準めざして取り組む。

〇 昇給ルールの導入・明確化の取り組みを強化する。昇給ルールが確立されている場合は、その昇給分を確保した上で、「働きの価値に見合った水準」を追求する。

④ 男女間賃金格差の是正

 男女間賃金格差は、男女の勤続年数や管理職比率の差異が主要因となっており、これは仕事の配置や配分、教育・育成、性別役割分担意識などによる男女の偏りが、男女の働き方全体の結果指標にあらわれるものである。すべての組合は、女性活躍推進法にもとづく状況把握項目であることを踏まえ、男女別の賃金実態の把握を行い、職場における男女間賃金格差の是正に向けて取り組みを進める。

⑤ 企業内最低賃金および初任給

〇 すべての組合は、企業内最低賃金を産業の公正基準を担保するにふさわしい水準で要求し、協定化をはかる。また適用労働者の拡大をめざす。

〇 中途入社者の賃金を底支えする観点から、年齢別最低到達水準についても協定締結をめざす。

〇 すべての賃金の基礎である初任給について社会水準を確保する。
 18歳高卒初任給の参考目標値……172,500円※

 ※連合2018「賃金・一時金・退職金調査」速報値より主要組合の高卒初任給の平均額に2%分を上乗せした額

⑥ 一時金

 月例賃金の引き上げにこだわりつつ、年収確保の観点も含め水準の向上・確保をはかることとする。

(2)「すべての労働者の立場にたった働き方」の見直し

 健康で働き続けられる労働時間と過労死ゼロの実現、超少子高齢化・人口減少が進むわが国の社会構造を踏まえ、「社会生活の時間」の充実を含めワーク・ライフ・バランス社会の実現と個々人の状況やニーズにあった働き方と処遇のあり方について総体的な検討と協議を行う。

① 長時間労働の是正と均等待遇の実現

 構成組織は、働き方改革関連法(時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金等)が施行されることを踏まえ、それぞれの産業全体の働き方の見直しの方向感を方針等の策定により示し、各組合の実践を通じて、職場と産業全体の基盤を強化する。なお、企業規模によって、施行時期や適用猶予期間の有無、適用除外となるか否かは異なるが、取引の適正化の観点も踏まえ、取り組みの濃淡や負担感の偏在が生じないよう、すべての構成組織・組合が同時に取り組みを行う。

② 人材育成と教育訓練の充実

 中小企業の維持・発展、非正規労働者の雇用安定に向けては、能力開発など人材育成の充実が欠かせない。教育訓練機会の確保や職場での働き方など、様々な状況を踏まえ付加価値創造の源泉である「働くことの価値」を高めていくためにも、広く「人への投資」を求めていく。

③ 中小企業・非正規労働者等の退職給付制度の整備

〇 企業年金のない事業所においては、企業年金制度の整備を事業主に求める。その際、企業年金は賃金の後払いとしての性格に鑑み、確定給付企業年金(DB)を中心に制度設計を検討する。

〇 非正規労働者に企業年金が支給されるよう、退職金規程の整備をはかる。

④ ワークルールの取り組み

 すべての職場におけるディーセント・ワークの実現、ワーク・ライフ・バランスの推進、コンプライアンスの徹底をはかる観点から取り組みを進める。
 なお、労働関係法令には企業規模が一定の人数に満たない場合、あるいは業種によって、義務を免除する、あるいは努力義務とする条項や、特別措置が適用される条項があるが、とりわけ「人数規模により対応が異なる労働関係法令」については、企業規模にかかわらず取り組みを進めることとする。

〇 改正労働基準法に関する取り組み
 罰則付き時間外労働の上限規制を先取りした取り組みに加えて、労働時間規制の実効性を高めるべく、「36協定の点検(休日労働の抑制、限度時間を超える場合の健康確保措置、過半数労働組合・過半数代表者のチェック、36協定の周知状況等)、労働時間管理の新ガイドライン等を踏まえた労働時間管理・適正把握の徹底、事業場外みなしおよび裁量労働制の適正運用に向けた点検(労使協定・労使委員会、健康・福祉確保措置の実施状況、労働時間の状況)」を行う。

〇 すべての労働者の雇用安定と公正な労働条件確保の取り組み
 雇用の原則は「期間の定めのない直接雇用」であることを踏まえ、法令遵守はもとより、法令を上回る取り組みを進める。

<パート・有期契約労働者に関する取り組み>

ア) 同一労働同一賃金の法整備を踏まえ、労働組合への加入の有無を問わず、職場のパート・有期で働く者の労働諸条件を点検し、以下の取り組みをはかる。

ⅰ. 正規雇用労働者とパート・有期で働く者の労働条件・待遇差の確認

ⅱ. (待遇差がある場合)個々の労働条件・待遇ごとに、その目的・性質に照らして正規雇用労働者との待遇差が不合理となっていないかを確認

ⅲ. (不合理な差がある場合)待遇差の是正

ⅳ. パート・有期雇用労働者の組合加入およびその声を踏まえた労使協議の実施

イ) 有期雇用で働く者について、労働契約法18条の無期転換ルールの適正運用に向けて、「連合『改正労働契約法』に関する取り組みについて」(第13回中央執行委員会確認/2012.10.18)を参照し、取り組みをはかる。

<派遣労働者に関する取り組み>

ア) 2015年労働者派遣法改正を踏まえ、「改正労働者派遣法に関する連合の取り組み」(第2回中央執行委員会確認/2015.11.20)を参照し、取り組みをはかる。

イ) 同一労働同一賃金の法整備において派遣労働者と派遣先労働者との均等・均衡待遇が原則とされたことを踏まえ、以下の取り組みをはかる。

ⅰ. 正規雇用労働者と派遣労働者の労働条件・待遇差を確認する

ⅱ. 派遣先均等・均衡待遇が可能な水準での派遣料金設定や派遣元への待遇情報の提供など、事業主に対する必要な対応を求める

ⅲ. 食堂・休憩室・更衣室など福利厚生施設などについて派遣労働者に不利な利用条件などが設定されている場合は、是正を求める

〇 障がい者雇用に関する取り組み
 2018年4月より障害者雇用促進法に基づく法定雇用率が2.2%(国・地方自治体2.5%、教育委員会2.4%)に引き上げられたことを踏まえ、職場における障がい者の個別性に配慮した雇用環境を整備した上で、障害者雇用率の達成に取り組む。
 また、事業者の責務である「障がい者であることを理由とした不当な差別的取扱いの禁止」「合理的配慮の提供義務」「相談体制の整備・苦情処理および紛争解決の援助」についても、労働協約・就業規則のチェックや見直しに取り組む(「「改正障害者雇用促進法」に関する連合の取り組みについて」(第23回中央執行委員会確認/2015.8.27)参照)。

〇 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大に関する取り組み
 2016年10月より501人以上の企業等における短時間労働者に対する社会保険の適用が拡大されたことを踏まえ、a)社会保険が適用されるべき労働者が全員適用されているか点検・確認するとともに、b)事業者が適用拡大を回避するために短時間労働者の労働条件の不利益変更を行わないことを確認する。
 また、2017年4月からは500人以下の民間企業についても、労使合意にもとづく短時間労働者への適用拡大が可能となったことを踏まえ、c)500人以下の企業において短時間労働者へ社会保険を適用するよう事業主に求めるなどの取り組みを進める。

〇 治療と仕事の両立の推進に関する取り組み
 疾病などを抱える労働者は、治療などのための柔軟な勤務制度の整備や通院目的の休暇に加え、病気の重症化予防の取り組みなどを必要としている。とりわけ、長期にわたる治療が必要な疾病などを抱える労働者からの申出があった場合に円滑な対応ができるよう、休暇・休業制度などについて、労働協約・就業規則など諸規程の整備を進める。さらに、疾病などを抱える労働者のプライバシーに配慮しつつ、受け入れる事業場の上司や同僚への周知や理解促進に取り組む(「治療と職業生活の両立支援に向けた取り組み指針」(第14回中央執行委員会確認/2016.11.10)参照)。

(3)男女平等の推進

 性別にかかわらず人権の尊重の観点から、ハラスメント対策や差別禁止の取り組み、仕事と生活の調和をはかるため、すべての労働者が両立支援制度を利用できる環境整備など、雇用における男女平等の実現、均等待遇に向けた取り組みを推進する。

〇 女性活躍推進法、男女雇用機会均等法等の周知徹底・点検
 雇用における男女平等の実現に向けて、女性活躍推進法や男女雇用機会均等法の法改正と、職場における実効性の向上のため、周知徹底と定着・点検の取り組みを行う。また、取り組みにあたり、労使交渉・協議では、できる限り実証的なデータにもとづく根拠を示し、改善を求めていく。

〇 あらゆるハラスメント対策と差別禁止に関する取り組み
 職場のハラスメントをめぐる現状と課題を踏まえ、第三者を含めたあらゆるハラスメント対策や差別禁止に向けた取り組みの検討や周知徹底を行うとともに、労使協議を進める。

〇 育児や介護と仕事の両立に向けた環境整備

・ 改正育児・介護休業法の周知・点検をはかるとともに、両立支援策の拡充の観点から、これを上回る内容への拡充について労働協約の改定に取り組む。

・ 有期契約労働者に対して制度を拡充する。

・ 育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、短時間勤務、所定外労働の免除の申し出や取得により、解雇あるいは昇進・昇格の人事考課などにおいてマイナス評価とするなど、不利益取り扱いが行われないよう労使で確認・徹底する。

・ 妊産婦保護制度や母性健康管理について周知されているか点検し、妊娠・出産およびこれに関わる制度を利用したことによる不利益取り扱いの禁止を徹底する。

・ 女性の就業継続率の向上や男女のワーク・ライフ・バランスの観点から、男性の育児休業取得促進に取り組む。

・ 両立支援制度や介護保険制度に関する情報提供など、仕事と介護の両立を支援するための相談窓口を設置するよう各企業に働きかける。

・ 不妊治療と仕事の両立に向け、取得理由に不妊治療を含めた休暇等(多目的休暇または積立休暇等を含む)の制度整備に取り組む。

・ 事業所内保育施設(認可施設)の設置、継続に取り組む。新設が難しい場合は、認可施設と同等の質が確保された企業主導型保育施設の設置に取り組む。

〇 次世代育成支援対策推進法にもとづく取り組みの推進

・ ワーク・ライフ・バランスの推進に向けた労働組合の方針を明確にし、労使協議を通じて、計画期間、目標、実施方法・体制などを確認する。さらに、作成した行動計画の実現による「くるみん」マーク、および「プラチナくるみん」の取得をめざす。

・ 「くるみん」マークおよび「プラチナくるみん」を取得した職場において、2017年4月1日施行の改正省令にもとづく認定基準の変更も踏まえつつ、その後の取り組みが後退していないか労使で確認し、計画内容の実効性を高める。

3.運動の両輪としての「政策・制度実現の取り組み」

すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」に向けて、政策・制度実現の取り組みを春季生活闘争における労働諸条件改善の取り組みとともに運動の両輪として推し進める。
 具体的には、「2019年度 重点政策実現の取り組み方針」を踏まえ、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた政策課題について、政府・政党への働きかけ、審議会・国会審議対応、街宣活動などを通じた世論喚起など、連合本部・構成組織・地方連合会が一体となって幅広い運動を展開する。

〇 企業間における公正・適正な取引関係の確立に向けた取り組み

〇 税による所得再分配機能の強化に向けた取り組み

〇 パワーハラスメントをはじめとするあらゆるハラスメント対策の法制化と差別禁止に向けた取り組み

〇 医療・介護・保育サービスの人材確保に向けた取り組み

〇 子ども・子育て支援の充実と待機児童の解消等の財源確保に向けた取り組み

〇 教育の機会均等実現に向けた教育の無償化・奨学金の拡充に向けた取り組み

V.電力総連の基本方針

 電力関連産業を将来にわたり健全に発展させていくためには、短期・中長期的な観点から、電力関連産業に働く者すべての経済的・社会的地位の向上を図るとともに、組合員とその家族の生活の安定・安心、やりがい・働きがいを実感できる魅力ある産業の構築に向けた取り組みを継続していくことが必要なことはいうまでもない。
 電力総連2019春季生活闘争は、雇用の維持拡大、労使の協力と協議、成果の公正な分配を柱とした「生産性三原則」のもと、健全な産業の発展の基盤となる人材の維持・確保、技術・技能の維持・継承等の着実な実現に向け、賃金引き上げをはじめとする「人への投資」を促すとともに、職場を熟知する労働組合による働く者のための働き方の見直しを進めることで、明日への活力につなげていくことが重要との認識に立ち、以下の方針をもとに取り組みを展開する。

1.賃金については、賃金カーブ維持分を確保したうえで、「経済の自律的成長」などマクロの観点に加え、電力関連産業の健全な発展に不可欠な人材の維持・確保、「格差是正」等に資するよう賃金改定に取り組み、もって電力関連産業に働く者の「底上げ・底支え」を継続・前進させる。

2.賞与・一時金については、年間賃金の一部として安定した生活を支える生活給部分を最低限確保することを基本に取り組むこととし、過去の妥結実績、企業業績、生産性向上や職場実態などを勘案した要求を行う。

3.仕事と私生活の調和が図られる環境の整備については、過労死・過労自殺をはじめとする健康障害の未然防止や生活時間確保等に向けて、改正労働基準法に定める時間外労働の上限規制等への適切な対応を図ることはもとより、企業規模・業種を問わず、先行的な取り組みによって長時間労働の早期是正をめざすとともに、育児・介護・治療といったライフイベントに応じたより多様な働き方を構築するなど、ワーク・ライフ・バランスの実現をめざす取り組みを進める。

4.電力関連産業で働く誰もが安心して働き続けることができるよう、高年齢者雇用、障がい者雇用、女性活躍推進等、労働環境の確保・改善、制度の整備・充実に向け取り組む。

5.非正規労働者の待遇改善の取り組みについては、労働諸条件向上の基盤となる組織化を進めるとともに、同一労働同一賃金の実現に向けた法改正が成立したことを踏まえ、同じ職場で働く仲間として、正社員との均等・均衡待遇の確立につながる取り組みを進め、電力関連産業に働く者全体の底上げを図る。

VI.具体的な取り組み

1.雇用安定と人材確保への取り組み

電力関連産業を取り巻く環境の変化に伴い、経営効率化方策のさらなる深化、企業の再編やグループ企業との役割の見直し、スマートメーター導入の加速化などが進行している。一部の加盟組合においては、雇用に対する不安が生じている。
 また、少子化に伴う若年労働者の減少や電力関連産業を取り巻く環境変化に伴い、新規採用がいっそう困難となっているほか、堅調な経済による労働力需給のひっ迫により人手不足が顕在化している。それに伴い、電力関連産業の現場では、事業を支える人材の慢性的な不足や技術・技能の維持・継承が困難となる事態が一部に散見されるほか、職場内の活性化にも影響しかねない深刻な課題となっている。
 今後も、電力関連産業が健全に発展していくためには、そこに働く者の雇用不安の払拭と人材の確保・育成が重要であり、構成総連・加盟組合が総合力を発揮して諸課題の解決に向けて取り組みを進める。

〇 加盟組合は、企業の経営状況や経営計画などを確実に把握したうえで、経営基盤の安定に向けた労使協議を行うとともに、雇用安定や人材の確保・育成の重要性について、労使の共通認識を醸成していく。

〇 加盟組合は、雇用安定に資する条項の整備に向けて、人事条項に関する事項について確認するとともに、労働協約の締結、整備・充実に取り組む。

〇 構成総連は、加盟組合間の連携をいっそう深め、職場課題を的確に把握するとともに、雇用安定や人材の確保・育成に係わる諸課題の解決に向けて、労使懇談会の充実に取り組む。

〇 電力総連・構成総連・加盟組合・部会は、状況に応じて、申入れの実施を含め、雇用安定や人材の確保・育成につながる取り組みを行う。

2.賃金の取り組み

すべての加盟組合は、事前準備として自社の賃金実態把握を確実に行ったうえで、賃金カーブ維持分の確保に徹底的にこだわる。そのうえで、「経済の自律的成長」などマクロの観点からの所得向上や電力関連産業を支える人材の維持・確保などに資する賃金引き上げ、「格差是正」などを通じて、電力関連産業に働く者の「底上げ・底支え」をめざし、3,000円以上の賃金改定に取り組む。
 とりわけ、自組合の賃金水準が社会水準を下回る場合には、当該組合の実態を踏まえた格差是正分を上乗せした賃金改定に取り組むことを基本とする。なお、社会水準との格差是正分の目安は3,000円とする。

 ※社会水準との格差是正分は、電力総連ミニマム水準、目標水準、2019指標等をもとに、自組合の賃金実態に応じて設定。

(1)自社の賃金実態の把握

交渉の事前準備として、賃金実態を把握し賃金カーブ維持分に必要な原資の算出を行うとともに、賃金カーブの歪みや賃金分布の偏りなどの課題把握を行う。また、過去の賃金カーブと比較して、賃金水準が経年的に低下しているなどの要因の検証も十分に行う。

※賃金カーブの歪みとは:モデル賃金カーブと比較し傾きの度合いや歪みについて把握する

※賃金分布の偏りとは:年齢間や男女間などでのバラツキの有無について把握する

(2)賃金カーブ維持分の確保

○ 賃金制度(昇給ルールが制度化されている)が確立している加盟組合は、その賃金表を維持する。

○ 賃金制度(昇給ルールが制度化されている)が確立していない加盟組合は、賃金カーブ維持分を要求する。

○ 雇用安定を優先して、定期昇給相当分の凍結や削減などを行わざるを得なかった加盟組合は、それを回復する。

(3)マクロの観点からの「所得向上」に向けた賃金引き上げの取り組み

「経済の自律的成長」を図るための所得向上、賃金の社会性を踏まえた賃金の引き上げに取り組む。

(4)職場活力高揚の観点からの賃金引き上げの取り組み

人材の維持・確保に向けた労働条件の引き上げや魅力ある産業をめざした「人への投資」、生産性向上に向けた貢献・努力、経営環境などを総合的に勘案し、職場活力高揚に向けて賃金の引き上げに取り組む。

(5)賃金の「格差是正」・「復元」への取り組み

自社の賃金実態を把握し、電力総連ミニマム水準より低位にある加盟組合や経年的に賃金水準が低下してきている加盟組合は、以下に掲げる指標を参考に、要求水準を決定し、賃金水準の格差是正・復元に積極的に取り組む。

① 個別賃金水準が「電力総連ミニマム水準」を下回る加盟組合は、最低限必要な生計費を確保する観点から、その水準に到達するよう取り組む。

【電力総連ミニマム水準】

年齢 18歳 20歳 25歳 30歳 35歳 40歳 45歳 50歳
扶養 単身 単身 単身 配偶者+
子1
配偶者+
子2
配偶者+
子2
配偶者+
子2
配偶者+
子2
水準
(円)
153,800 162,300 188,300 225,200 277,500 310,700 337,000 357,600

※水準は人事院標準生計費を基に算出

※地域別最低賃金に法定労働時間(174時間)を乗じた値がミニマム水準を超える地域は、地域別最低賃金に法定労働時間を乗じた値をめざす。

② 経年的に賃金水準が低下している加盟組合は、その実態を把握し、社会水準(厚生労働省:賃金構造基本統計調査・規模計)をめざすという考え方に基づき、格差是正および復元に取り組む。なお、電力総連加盟組合300名以下の個別賃金30歳ポイント(単純平均)での指標を示すと次のとおりとなる。

(参考)

指標1 ○社会水準との格差是正
個別賃金が直近の社会水準と比較し低位にある場合は、中期的にその格差是正に取り組む。【1,500円】
指標2 ○自社賃金水準ピークへの復元
自社賃金水準ピークへの復元をめざし、職場実態を踏まえ、中長期的にその復元に取り組む。【1,800円】
指標3 ○社会水準ピークとの格差是正
連合全体としてめざす水準であり、職場実態を踏まえ、中長期的にその格差是正に取り組む。【2,000円】
2019
指標
○社会水準回帰線との格差是正
個別賃金が直近の社会水準と比較し低位にある場合の短期的な取り組み。
【2,800〜8,300円】※単年度の目安水準:3,000円(≒8,300円÷3年)

(6)個別賃金水準の引き上げ

自社の賃金実態や個別の事情などを勘案し、個別賃金水準の引き上げが必要と判断される加盟組合は、社会水準の確保や水準低下の回復、賃金カーブの歪みや賃金分布の偏りの是正など、以下に掲げる指標などを踏まえ取り組む。

① 社会水準をめざす加盟組合は、下表の目標水準を参考に、その獲得に取り組む。

【目標水準】

  目標水準I 目標水準II
高卒18歳(初任給) 169,200円 169,200円
高卒20歳・勤続2年 173,000円 180,000円
高卒25歳・勤続7年 219,000円 245,000円
高卒30歳・勤続12年
(主要指標)
264,000円 289,000円
高卒35歳・勤続17年
(主要指標)
300,000円 342,000円
高卒40歳・勤続22年 342,000円 389,000円
高卒45歳・勤続27年 383,000円 445,000円

※電力総連賃金実態調査ならびに厚生労働省賃金構造基本統計調査の過去5年平均額を勘案し算出。目標水準Iは中位、目標水準IIは第3四分位。

※高卒18歳(初任給)については連合加盟組合における主要組合の高卒初任給水準を考慮し設定。

② 賃金制度改定による影響の検証と回復

労使合意した賃金制度について、事業環境等を踏まえ、月例賃金の一時的減額や定期昇給原資等を減額改定した場合などは、その後の個別賃金水準の実態を把握し、自社の社会的位置取りや組合員の労働意欲向上を勘案し要求を行う。

③ 賃金カーブの歪みや賃金分布の偏りの是正

自社の賃金実態を把握し、歪みや偏りがあり、是正が必要と判断される場合は、その改善に取り組む。

(7)初任給の引き上げ

技術・技能の継承を図るうえで安定的な新規採用は必要であり、労働需給の情勢や同業他社との比較・分析を行い、電力関連産業を支える有用な人材を確保できるよう各加盟組合で要求額を決定する。なお、電力総連ミニマム水準18歳相当額を下回っている加盟組合はその確保に向けて取り組む。

(8)配分交渉の充実

生活の安定を確保し、公平公正でやりがい働きがいにつながる配分をめざし、要求策定段階から配分交渉を重視した取り組みを行う。

(9)賃金制度の確立

賃金制度・体系が確立されていない加盟組合は、賃金実態を把握し、自社の課題を明らかにしたうえで、労使による検討・協議の場を設置し、賃金制度・体系の確立に向け取り組む。とくに、安定的な賃金水準を確保する観点から、定期昇給のルール化を図っていく。

(10)最低賃金協定の取り組み

パートタイム労働者・有期契約労働者なども含めた電力関連産業に働く者すべての企業内最低賃金として、以下の要求水準を踏まえて、組合ごとの最低賃金協定を締結する。

【最低賃金締結基準:東京都・神奈川の地域別最低賃金時間額を考慮し、18歳相当額として月額「172,000円以上」または時間額「990円以上」】

※東京都(985円)、神奈川県(983円)を考慮し、18歳相当額(990円)×法定労働時間(174時間)≒172,000円

3.賞与・一時金の取り組み

賞与・一時金については、年間賃金の一部として安定した生活を支える生活給部分を最低限確保することを基本として、次により要求を行う。

(1)要求水準

「年間4ヵ月を最低水準」とする。なお、過去の妥結実績、企業業績、生産性向上や職場実態なども勘案した要求を行う。

(2)要求・妥結方式

賞与・一時金は、年間賃金の一部として位置づけ、年間収入の安定を図るため、夏冬型による年間要求・年間妥結を基本とする。

(3)冬季分の扱い

冬季分については、賃金引き上げ後のベースを使用し、夏季分に準じた扱いとする。

(4)支給日

夏季分は6月上旬、冬季分は12月上旬とする。

4.仕事と私生活の調和が図られる環境の整備

(1)年間総実労働時間の短縮

長時間労働は、家庭における役割や地域社会とのつながり、自己啓発などの個人の生活と仕事の調和に影響を与えることはもとより、過重労働による体調不良やメンタルヘルス不調、過労死といった問題を引き起こすほか、女性や若者、高齢者など多様な人材が活躍できる社会の構築を阻害する要因となる。

また、罰則付き時間外労働の上限規制の導入や適正な労働時間管理の義務化など、これまで連合大で実現をめざし取り組みを進めてきた改正労働基準法等が2019年4月1日(中小企業は一部2020年4月1日等)に施行されることとなった。

各加盟組合は、法改正への適切な対応を図るとともに、法改正の趣旨や意義ならびに「電力総連時短指針」の考え方を踏まえつつ、労働者の身体・精神の保護や家庭生活・社会生活を営むための生活時間の確保を念頭に、企業規模・業種を問わず、36協定の延長時間引き下げによる所定外労働時間の削減や勤務間インターバル制度等による休息時間の確保、年次有給休暇取得率向上等につなげるべく最大限取り組むなど、働き方の見直しをよりいっそう積極的に推進する。もって年間総実労働時間1800時間の達成をめざす。

① 労働時間に関する労使協議の充実

○ 厚生労働省「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」が策定されたことを踏まえ、36協定の届出様式の変更や特別条項付協定を締結する場合の健康福祉確保措置など当該指針について労使委員会等を通じて理解を深めるとともに、36協定の特別条項の延長時間引き下げや特別条項締結時における健康福祉確保措置の実施など当該指針の趣旨に沿った締結内容となるよう労使協議を行う。

○ 年間を通した労働時間に関する取り組みのフォローや、改善すべき事項について、労使委員会等を通じて、労使の協議や話し合いを行い、協定化(議事録、覚書、確認メモを含む)を図るとともに、36協定の特別条項の延長時間引き下げや休息時間確保施策等、長時間労働解消に向けた労使行動計画の策定に努める。なお、すべての加盟組合は、所定外労働時間や年次有給休暇取得率など、個人別の労働時間実績についてデータの開示を求め、半期ごとに労使対応を行い、必要に応じて業務量の均平化や人員配置の見直しなどを求める。

○ 労働時間管理については、労働安全衛生法改正(2019年4月1日施行)によりすべての労働者を対象とした客観的方法による労働時間の把握が義務化されることやコンプライアンスの観点も踏まえ、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に則った取り扱いとなるよう取り組む。

② 年次有給休暇の取得向上の取り組み

○ 労働者の心身の健康を確保する観点から、年次有給休暇の取得目標を、「電力総連時短指針」の「年間10日以上」をめざす。とくに、労働基準法改正(2019年4月1日施行)により事業者に年休5日の時季指定が義務化されることを踏まえ、取得日数が5日未満の組合員を発生させることのないよう、計画取得や連続取得など、実態に応じた制度や対策を求めるとともに、年次有給休暇管理簿や使用者による時季指定に関する取り扱いについて労使協議を行う。

○ 年次有給休暇の完全取得が概ねできている組合は、初年度付与日数を15日以上とすることや年間20日付与となるまでの勤続年数の短縮を要求する。

○ 職場において、計画的に月1日以上は有給休暇の取得ができるよう、職場環境の整備やルール作りなどを行う。

③ 年間所定労働時間短縮の取り組み

○ 年間所定労働時間が2000時間を超えている加盟組合は、「電力総連時短指針」に基づき、休日日数を増やすなど年間所定労働時間を2000時間以下とするよう要求を行う。

④ 所定外労働時間の削減などの取り組み

○ 所定外労働時間の削減に向け、36協定の締結について、新たに導入される時間外労働の上限規制への適正な対応を図りつつ、以下の内容を基本に取り組みを進める。

・ 休日労働時間を含む時間外労働時間は、1ヵ月45時間以内、年360時間以内に抑えることを原則とする。

・ やむを得ず特別条項を締結する場合においては、休日労働時間を含めて年720時間以内とすることを基本とし、労働時間の延長は原則として限度時間(1ヵ月45時間以内、年360時間以内)を超えないものとされていることを踏まえ、より抑制的な時間となるよう取り組む。

・ 休日労働を含めて年720時間を超えざるを得ない場合であっても、業務運営や人員配置の見直しに向けた労使協議を行い、休日労働時間を含め年720時間以内に近づけるべく、段階的に引き下げを行う。

・ 時間外労働の限度基準適用猶予業務(建設業・自動車運転業務など)や適用除外業務(新技術・新商品等の研究開発業務)においても、他業種と同様の上限時間を設定すること等を基本に取り組みを進める。

・ 時間外労働時間の積算は、法定労働時間ではなく所定労働時間を上回る労働時間とするよう取り組む。

○ 過重労働に係わる医師の面談指導については、月80時間を超過した者全員に実施することを基本に、月45時間超過者で健康への配慮が必要な者についても、その対象とすることを求める。

○ 所所定外労働時間削減については、連合の「時短レシピ」や「電力総連時短指針」などを参考に職場実態に応じて取り組み(定時退社日や計画年休取得制度の取り組みなど)を求める。

○ 労働時間等設定改善法改正(2019年4月1日施行)により努力義務化される勤務間インターバル制度の導入など、十分な休息時間の確保に向け、職場実態に応じた実効性のある制度導入や対策を求める。

⑤ 時間外割増率の引き上げなどの取り組み

○ 1ヵ月60時間を超える時間外労働の割増率については、労働基準法改正(2024年4月1日施行)により中小企業に対する猶予措置が廃止される趣旨や現状のダブルスタンダードを早期に解消する観点から、猶予対象となっている中小企業についても50%以上の実現に取り組む。

○ 「限度時間を超える時間外労働は法定割増率を超える率とするよう努める」とする規定に基づき、法定に張り付いている場合は割増率30%以上の要求を行う。また、法定を超える率となっている場合においても30%以上となるよう取り組む。

○ 時間外労働の積算は所定労働時間を超過したものとし、時間外労働の積算方法については、平日・休日の区別なく合算するよう求める。

○ 代替休暇の導入にあたっては、労働対価は本来賃金で支払うことが原則であるとの考え方を踏まえ、加盟組合は個別に判断することとする。

○ 年次有給休暇の時間単位付与の導入にあたっては、有給休暇は本来1労働日を単位として取得するものとの考え方を踏まえ、加盟組合は個別に判断する。ただし、制度を導入する場合には、制度の運用状況や取得実績を確認しながら日数を拡大するなど、慎重に対応を行う。

(2)仕事と育児・介護・治療の両立支援の取り組み

① 改正育児・介護休業法などへの対応

2017年1月1日施行の「改正育児・介護休業法」など一連の法改正は、男女ともに子育てや介護をしながら働き続けることができる就業環境の整備を目的とし、企業の規模を問わず育児・介護休業の制度見直しや有期契約労働者の休業取得要件の緩和、ハラスメントの防止措置などの実施を義務付けるものである。

また、同年10月1日施行の法改正では、保育所などに入所できず退職を余儀なくされる事態を防ぐために最長2歳まで育児休業の再延長を可能とするなどの見直しが行われた。

近年の多様な家族形態・雇用形態に対応した両立支援制度や介護による離職防止に向けた制度の充実など、法改正の趣旨を踏まえた取り組みを進める。

○ 法改正を踏まえた制度となっているか職場の調査・点検を行うとともに、制度趣旨や内容の職場周知を図るなどの労使対応を行う。

○ 妊娠・出産・育児休業・介護休業などを理由とした上司や同僚によるハラスメント防止措置や不利益取り扱いの禁止を求めるとともに、派遣労働者に関しては、派遣元だけではなく派遣先にも同様の措置や不利益取扱いの禁止規定が適用されることから、職場環境の改善に向けた労使対応を行う。

② 仕事と育児・介護・治療の両立支援制度の整備・拡充

人材の維持・確保が重要課題となるなか、貴重な技術・技能を有する人材が育児・介護・病気治療等を理由に離職することを防ぎ、仕事と家庭における役割を両立しながら働き続けることのできる職場の実現に向け、「電力総連 仕事と私生活の調和」の考え方を踏まえつつ、ライフイベントに応じた柔軟な働き方ができるよう、次の内容を基本に環境整備を進める。

○ 育児休業を取得できる子の年齢について、法においては原則1歳まで(保育所に入所できない場合は最長2歳まで延長可能)となっているが、希望する時に保育所に入園できない実態が多いことや保育所などの入園時期が主に4月ということを踏まえ、3歳の年度末をめざす。また、職場のニーズや地域事情に応じて、グループ企業との共同設置も視野に、事業所内託児所の設置に向け取り組む。

○ 育児による短時間勤務制度については、未就学児童(小学校就学前)までを対象とし、既に未就学児童を対象としている場合は、放課後児童クラブの待機児童問題や、下校時の安全確保などに鑑み、対象とする年齢の拡大をめざす。

○ 2017年10月1日施行の育児・介護休業法改正で努力義務化された「育児目的休暇(配偶者出産休暇、子の行事参加のための休暇等)」の導入に努める。

○ 介護休業は、介護期間の見極めが困難なことや必要とする介護状態が個人によって異なることから、法定の介護休業期間(通算93日)を上回る日数の付与や法定(3回)以上の分割取得を可能とする柔軟な制度構築をめざすとともに、法定の介護休暇(対象1人あたり5日)以上の日数付与や時間単位での取得、短時間勤務やフレックスタイム制度など、柔軟な働き方ができるよう職場実態に合わせた労使対応を行う。

○ 長期にわたる治療が必要な疾病等を抱える労働者が、疾病等に対する職場の理解不足・支援不足によって離職したり、業務によって疾病を増悪させることなく、適切な治療を受けながら働き続けられるよう、就業場所変更、作業転換、労働時間短縮などの配慮や「両立支援プラン」の策定、時間単位休暇や短時間勤務制度の充実など、対象者個々人の状況に応じた対応が可能となるよう取り組む。

○ 休業(休職)者の職場復帰に向け、「職場復帰支援プラン」の策定や試し出社制度などの充実に取り組む。また、メンタルヘルスによる休職者が復職と休業を繰り返す場合においては、医療機関による復職支援プログラム(リワークプログラム)を活用するなど、支援策拡充に向け取り組む。

○ 制度利用者の職場復帰後の支援方策や欠員時の職場対応ルールの確立に向けて取り組むとともに、やむを得ない事情により離職せざるを得ない状況となった場合の再就職・再雇用制度導入など制度充実に向けて取り組む。

○ 育児・介護のみならず単身赴任者支援など、家庭内や地域社会における家族的責任を果たしながら働き続けることができる環境整備に向けて、時間単位での休暇取得やフレックスタイム制度の導入など、職場実態に合わせた取り組みを行う。

○ 両立支援制度の利用促進のためには、制度の充実に加えて利用しやすい環境づくりが不可欠なことから、職場実態を把握したうえで、必要に応じて労使協議を行うとともに、加盟組合は育児・介護・治療と仕事の両立に関する相談機能の強化に努める。

○ 次世代育成支援対策推進法の趣旨に基づき、行動計画の実施状況のフォローや、行動計画の更新の取り組みを行う。なお、義務化の対象となっていない100名以下の組合においても、次世代育成の観点から、職場状況を踏まえた労使対応を行う。

○ 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした「子育てサポート企業」を厚生労働大臣が認定する「くるみん・プラチナくるみん」制度については、働きやすい労働環境を整備するという観点に加え、人材の確保や公共調達における加点評価などの優遇措置があることも踏まえ、認定取得に向けた取り組みを通じてさらなる環境整備を進める。

5.誰もが安心できる労働条件や労働環境の確保

(1)高年齢者雇用への対応

定年延長、定年制の廃止、継続雇用制度のいずれかによって65歳までの雇用確保措置を講ずることとした改正高年齢者雇用安定法(2013年4月1日施行)の趣旨に基づき、高年齢者の活力高揚につながるよう、以下の内容を基本に取り組む。

○ 継続雇用制度を導入し、労使協定による対象者の基準を設けている場合は、希望者全員を対象に、65歳までの継続雇用とする労働協約の締結を行う。

○ それまでに培った経験に基づく技術・技能を活かし、やりがい・働きがいをもって、企業の発展に積極的に貢献できるよう、労働条件の整備や多様な働き方の確保に向けた労使対応を行うこととし、とりわけ、賃金水準については、労働の価値や貢献にふさわしく、かつ、高年齢期における社会水準の確保をめざした取り組みを図る。
 なお、定年延長や定年制廃止の場合には、働き方等に応じた均衡ある処遇の実現に向けて取り組む。

○ 高年齢者の就業場所を確保するため、働きやすい職場の創出、作業環境、能力開発、健康管理など、高年齢者の意欲につながる就業環境の整備に向けた労使対応を行うとともに、組織化に向けて取り組む。

(2)女性活躍推進法に基づく取り組み

2016年4月1日施行の女性活躍推進法や連合「第4次男女平等参画推進計画」および電力総連「男女平等参画社会の実現に向けた取り組み」を踏まえ、以下の内容を基本に取り組む。

○ 女性の活躍推進に向け、職場実態や課題の把握を行い、行動計画に反映するよう労使対応を行う。なお、義務化の対象となっていない300名以下の組合においても、法の趣旨を踏まえ、同様な取扱いとなるよう取り組む。

○ 春季生活闘争の取り組みを通じて、職場ニーズや課題などの把握に努めるとともに、非正規労働者においても同様な取扱いとなるよう取り組む。

○ 女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況などが優れた企業を厚生労働大臣が認定する「えるぼし」制度については、誰もが働きやすい労働環境を整備するという観点に加え、人材の確保や公共調達における加点評価などの優遇措置があることを踏まえ、認定取得に向けた取り組みを通じてさらなる環境整備を進める。

(3)障がい者への対応

障がい者がごく普通に社会の一員として共に生活できる「共生社会」実現をいっそう促進することを目的とする障害者雇用促進法では、募集・採用、賃金、配置、昇進をはじめとするあらゆる場面において、障がい者であることを理由とする差別を禁止するとともに、合理的な配慮の実施が義務化されている。ダイバーシティ(多様性)を尊重した職場環境の実現に向け、障がい者に対する差別がないか、働きやすい環境への配慮が十分になされているか職場実態の把握に努めるとともに、必要に応じて職場環境の改善に取り組む。

(4)退職一時金制度の確立・整備の取り組み

公的年金の支給開始年齢の引き上げや、マクロ経済スライドによって公的年金の水準が抑制される傾向にあるなか、安心した老後を過ごすための退職一時金の果たす役割はより大きくなっている。そのため、退職一時金制度が確立されていない加盟組合は、中小企業退職共済制度を活用するなど、早期確立をめざした取り組みを進める。また、制度が確立されている加盟組合は、電力総連のクリア水準である1,550万円以上の確保をめざす。

(5)災害補償制度の充実の取り組み

電力関連産業の社会的使命を果たす重責を担い犠牲となった組合員の業務上災害補償制度は、人命という何ものにも代えがたい価値への補償という労使共通の理念をもって、制度が確立されていない加盟組合については、制度化に向けた重点的な取り組みを行う。また、確立されている場合も、すべての加盟組合で電力総連のクリア水準3,500万円以上(業務上死亡・有扶養者)の補償額をめざす。

(6)ストレスチェック制度の活用について

2015年12月1日施行の改正労働安全衛生法の趣旨に基づき、以下の内容を基本にそれぞれの職場において労使一体となった取り組みを進める。

○ 労使委員会・安全衛生委員会などを通じた労使対応を行い、対象者の受検率・面談実施率の向上や、制度の充実に向けて取り組むとともに、派遣労働者に対するストレスチェックの実施状況についても確認を行う。合わせて、ストレスチェックの重要性について職場組合員に再度周知を行う。

○ 義務化の対象となっていない50名未満の事業場においても、メンタルヘルス不調の未然防止の観点から、実施に向けた労使対応を行う。

○ ストレスチェックの結果については、個人が特定されないようプライバシーの保護を前提とし、労使委員会・安全衛生委員会などにおいて集団分析を行い、労使で職場環境の改善につながるよう取り組む。

6.非正規労働者の待遇改善の取り組み

非正規労働者の賃金・労働条件の「底上げ・底支え」が社会的に求められているなか、電力総連においても、非正規労働者の待遇改善は電力関連産業で働く者全体の底上げを図ることにつながるとの考えのもと、「電力総連 パートタイム労働者等の均等待遇にむけた取り組み指針」に基づいた取り組みを進めている。
 同じ職場で働く仲間として、組合員か否かにかかわらず、改正労働契約法・改正労働者派遣法・改正パートタイム労働法の趣旨や、「同一労働同一賃金」の実現に向けた法改正が2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)に施行されることを踏まえ、職場における正社員と非正規労働者の均等・均衡待遇につながるよう、以下の内容を基本に取り組む。
 なお、取り組みを進めるにあたっては、厚生労働省「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(同一労働同一賃金ガイドライン)」を参考に、点検・改善を行う。

(1)パートタイム労働者・有期契約労働者などの待遇改善の取り組み

○ 各企業が雇用しているパートタイム労働者・有期契約労働者などについて、労働条件などの実態把握、ニーズを把握するための対話活動などを実施し、当該者および労使の三者で共通認識を図り、労働条件向上と組織化に向けた取り組みにつなげる。

○ 組織化に向けては、2013年4月1日施行の改正労働契約法により、有期契約労働者に対する無期転換ルール適用が2018年4月1日から開始されたことを好機ととらえ取り組みの加速化につなげる。

○ 正社員と同視すべきパートタイム労働者・有期契約労働者などの正社員化または正社員化に向けたルール作りを行う。

○ 正社員と同視すべきパートタイム労働者・有期契約労働者などについては、正社員との均等待遇に向けて取り組む。

○ 正社員と異なる働き方をしているパートタイム労働者・有期契約労働者などについても、個々の労働者の労働条件・待遇ごとにその目的・性質に照らして正社員との待遇差が不合理となっていないかを確認し、不合理な差がある場合はその是正に向けて取り組む。

○ 2018年4月から5年を超えて反復更新される有期契約労働者に対する無期転換権が発生していることを踏まえ、正社員転換を含む無期転換に関するルール作りを確実に行ったうえで、対象となる有期契約労働者への周知に取り組むとともに、無期転換ルールの運用状況(無期転換権の行使状況等)の把握に取り組む。

○ パートタイム労働者・有期契約労働者が無期契約労働者へ転換した際の労働条件については、正社員との均等・均衡を考慮し、働き方に相応しい待遇となるよう労使対応を行う。

○ 時給引き上げについては、最低賃金協定額を考慮し990円をめざし、職務内容、契約期間の実態などを踏まえた要求または要請を行う。なお、990円を超えている場合は、今年度の地域別最低賃金引き上げ額(平均27円)などを踏まえた要求または要請を行う。

(2)派遣労働者の取り組み

2015年9月30日施行の改正労働者派遣法等の趣旨を踏まえ、派遣労働者のよりいっそうの雇用の安定やキャリアアップを図ることができるよう、以下の内容を基本に取り組む。

○ 同じ職場で働く派遣労働者について、業務内容、受入規模、契約期間、就労場所、契約条件、契約会社名を対象に情報開示を求めるなど、実態把握を行う。

○ 派遣可能期間の期間制限(3年)が2018年10月1日より発生していることを踏まえ、同一事業所で3年を超えて受け入れる際の労働組合に対する意見聴取においては、要員に関する事項や雇用延長期間などについて、労使対応を行う。

○ 派遣先に課せられた雇用安定措置や均等・均衡待遇に向けた法改正への対応状況、雇い入れ努力義務などの実施状況についても適宜報告を求める。

○ 派遣労働者に対し、派遣先の募集情報の周知が適切に実施されているか適宜報告を求める。

7.政策・制度要求への取り組み

連合は政策・制度実現の取り組みを春季生活闘争とともにすべての働く者の底上げ・底支え、格差是正に向けた運動の両輪として推し進めるとしていることから、連合の中核産別としての役割と責任を果たすため、積極的に参画していく。

8.加盟組合の交渉推進強化への取り組み

加盟組合の雇用安定、賃金水準や労働条件の維持向上を図るため、電力総連・構成総連は、加盟組合の要求案策定の段階から、情報連携を密にし、加盟組合の実態に応じた支援を行うとともに、取引関係の適正化に向け、次の考え方に基づいて取り組みを強化する。

○ 自社の経営環境を踏まえた、当該労使の真摯な論議による主体的な解決が図れるよう支援を行う観点から、取引関係が当該労使自治による春闘交渉に悪影響を及ぼすことがないよう、申入れや要請を行うとともに、グループ企業内における適正な価格転嫁と公正取引の推進についても、各構成総連で開催される労使懇談会や個別オルグ等を活用するなど、交渉環境の整備を図る。

○ 労働環境点検活動の結果、労働協約などに改善・充実が必要な加盟組合や賃金実態把握が未実施、賃金カーブ維持分が確保できていない、電力総連ミニマム水準に未達などの加盟組合に対して、連携を強化し、重点的な支援を行う。
 また、個別賃金方式での要求、賃金制度の確立等が必要な加盟組合に対して実態に応じた支援を行う。

○ 業種別部会ごとの賃金カーブ維持分の一部として、定期昇給相当分の情報開示を加盟組合の要求案策定前に行い、電力総連内の相場形成に努める。なお、その他の加盟組合においても、構成総連内に対して情報開示に努める。

VII.進め方

連合2019春季生活闘争の進め方を踏まえたうえで、電力総連・構成総連・加盟組合・部会の連携を十分に図りながら電力総連の総力を結集して取り組むこととする。また、連合の各種共闘と連携を図りながら、有利解決に向けて取り組む。

1.要求書の提出

要求書の提出については、平成31年2月19日(火)を統一要求日として、一斉に実施する。ただし、事情により一斉要求への対応が難しい加盟組合は、遅くとも3月末までに要求する。

2.交渉推進体制

(1)交渉体制

○ 電力総連は、中央交渉推進委員会を設置し、構成総連・加盟組合の交渉推進に向けて積極的に支援・調整を行う。

○ 構成総連および部会は、交渉推進委員会を設置して各々の責任体制を確立し、加盟組合の早期かつ有利な解決に向けて積極的に支援・調整を行う。

○ 加盟組合は、構成総連や部会と連携を図り、自立・自決を基本に精力的に交渉を展開する。

(2)交渉の促進

○ 中央交渉推進委員会は、交渉状況を踏まえ加盟組合の交渉を有利に展開するため、「闘争の進め方」を発信する。

○ 構成総連および部会は、加盟組合の交渉推進を図るため、統一交渉ゾーンを設け一体となった交渉を展開する。とくに構成総連は、中小組合の交渉推進に向けて支援を強化するとともに、各加盟組合の妥結内容について時宜を得た発信を行うことで電力総連内の相場形成に努める。

○ 春季生活闘争に係わる情報は、交渉を促進するため適宜発信していく。

3.解決時期

交渉のヤマ場は、連合の解決促進ゾーンを踏まえ設定することとし、遅くとも4月末までの解決をめざす。


以上
 
全国電力関連産業労働組合総連合ホームページに掲載された画像その他の内容の無断転載はお断り致します。
Copyright(C) 2004 The Federation of Electric Power Related Industry Worker's Unions of Japan all rightreserved.