男女平等参画推進計画(2015年度改訂版)の総括

男女平等参画推進計画(2015年度改訂版)の総括と次期計画策定に向けた進め方

電力総連 男女平等参画推進計画(以下、推進計画)は、2015年度に3つのポジティブ・アクションを加えた内容に改訂し、2020年度の定時大会を目途に目標を達成することをめざし、加盟組合・構成総連・電力総連が連携のもと、取り組みを展開してきた。
推進計画は、2020年度大会(第41回定時大会)をもって、一つの区切りを迎えることとなり、2021年度は推進計画の総括と次期計画の策定に向け論議を深めることから、その結果と次期計画の策定視点について、下記のとおり取り纏めた。

Ⅰ.電力総連の男女平等参画推進計画の目標と結果

【方策1】男女で担う労働組合活動への参画推進計画

すべての組織が、それぞれの運動方針に「男女平等参画社会実現への取組み」を掲げ、執行委員、大会代議員、諸活動への女性参画努力目標を「それぞれの組織における女性組合員比率」として取り組みを展開した。

取り組みの結果
1)運動方針への「男女平等参画推進」の明記について
  • 電力総連・構成総連は、目標を達成している。
  • 加盟組合(235単組)のなかでは109単組が達成している。
(2)執行機関、決議機関など労働組合活動全般への女性参画の努力目標

①執行機関への女性参画

電力総連、構成総連および加盟組合の組織実態に合わせ、ステップ指標※1を設け取り組みを進めてきた。

  • 電力総連は、ステップ2の状況(女性役員は、21名中2名)
  • 構成総連のなかで、ステップ3に達成しているのは、4構成総連となっている。
  • 加盟組合のなかで、ステップ3に達成しているのは、24単組となっている。

用語解説

※1 ステップ指標
執行機関への女性参画をステップ指標として定めたものです。(下表参照)

ステップ1
  • 各級機関は、執行委員数に女性比率をかけた数字が整数1以上で女性執行委員がゼロの組織は、できるだけ早期に女性執行委員を1名配置する。
  • 専従役員が10名以上の加盟組合で女性専従役員がゼロの組織は、できるだけ早期に女性専従役員を1名配置する。
ステップ2
  • 各級機関は、執行委員数に女性比率をかけた数字が整数2以上で既に1名配置の組織は、女性組合員比率の半数の女性執行委員配置を目指す。
  • 専従役員が10名以上の加盟組合で女性比率をかけた数字が整数2以上の組織は、女性専従役員2名の配置を目指す。
ステップ3
  • 既に女性組合員比率の半数配置の各級機関は、女性組合員比率の女性執行委員配置を目指す。
  • 女性比率が50%超の加盟組合においては、三役への女性配置を目指す。
  • 専従役員がいる加盟組合は、女性組合員比率の女性専従役員配置を目指す。

②決議機関(大会)への女性参画

  • 電力総連は、2020年度(第41回定時大会)は、目標44名に対し37名(未達7名)となっている。なお、目標数を達成していただいた構成総連については、8構成総連(東北、中部、北陸、関西、九州、沖縄、原電、電発)となっている。
  • 構成総連のなかで、「女性組合員比率の代議員選出に努めている」と回答した構成総連は、9構成総連となっている。
  • 加盟組合のなかで、「女性組合員比率の代議員選出に努めている」と回答した加盟組合は、83単組となっている。

③日常活動

  • 労働組合の諸活動(集会など)において、女性組合員比率を目標に設定している加盟組合は、64単組となっている。
(3)取り組み推進体制の確立

①男女平等参画推進委員会の設置

  • 電力総連・構成総連においては、達成している。
  • 加盟組合のなかで男女平等参画推進委員会の設置や担当者を「配置している」加盟組合は、45単組となっている。

②人材育成方策および広報活動

  • 電力総連・構成総連ともに、男女平等参画に関する研修会などを定期的に開催し、男女平等参画に関する課題・法改正などの内容について共有を図るとともに、広報誌などに記載し、意識喚起を行ってきた。
  • また、電力総連では、各級機関における女性役員のスキルアップとネットワークづくりを目的に、女性役員連絡会を開催し、女性役員同士の課題・好事例などの共有に加え、地域を超えたネットワークづくり、役員のスキルアップはもとよりロールモデルの紹介、メンタルケアにつながるなど、女性参画への一助となったと受け止めている。
(4)女性委員会との位置づけ
  • 男女平等参画社会実現に向けて男女平等参画推進委員会と連携すること、女性委員会を設置していない組織は、女性が参加しやすく、意見を吸い上げる機能の設置を検討することとし取り組みを進めてきた。
  • 電力総連 女性委員会は、「電力総連女性委員会運営要項」にもとづき、委員会を年5回開催している。活動の内容は、委員のスキルアップに加え、連合集会や電力総連男女平等参画フォーラムへの参加、他産別・組織内議員との意見交換などを行ってきた。
  • また、2018年度の活動のなかで、これまでの活動を踏まえ、女性参画に関する課題を整理し「電力総連男女平等参画推進計画のさらなる取り組みの推進に向けて女性役員が必要と感じる仕組み・考え方」について取り纏め、更なる推進に向けた「3つの視点」や「女性役員育成のCDP(キャリア・デベロップメント・プログラム)※2の作成」について、男女平等参画推進委員との意見交換を行った。
  • 構成総連および加盟組合における女性委員会については、組織実態を踏まえ「女性連絡会」などとして、女性が参加しやすく意見を吸い上げる機能設置がなされている。

※2CDP(キャリア・デベロップメント・プログラム):キャリアや能力を開発するための中・長期的な計画のことです。

【方策2】男女が平等にいきいきと働くことができる職場や社会環境づくりのための方策
(略称:男女平等いきいき職場づくり方策)

(1)組合員一人ひとりの意識改革・意識高揚
  1. 各種研修へのカリキュラム導入や啓発ポスター作成などの広報活動を行う。
  2. 対話活動を通じて組合員の高揚に努める。
(2)労使交渉・協議を通じた制度の充実
  1. 法改正を踏まえた社内制度の整備あるいは法を上回る条件整備、制度の充実を図る。
  2. 男女が共に育児や介護との両立が可能な職場環境整備に努める。
(3)制度を利用しやすくする職場風土改善
  1. 男女が理解、協力し合い、お互いが制度を利用しやすくする職場風土形成を図る。
  2. 労使間の「男女平等参画推進委員会」等の設置を進める。
  3. 相談機能の充実を図る。
取り組みの結果
  • 電力総連においては、各級機関の担当者のスキルアップなどを目的に、男女平等参画フォーラムを開催してきた。本フォーラムで行われた内容をもとに、構成総連においてもイクボス※3や男性学※4、アンコンシャス・バイアス(無意識バイアス・無意識の偏見)※5など組合員の意識改革・意識高揚につながるフォーラムなどが開催された。さらには、職場風土改善に向けて、労使でフォーラムを開催するなど互いが制度を利用しやすく、より良い職場づくりがなされている。
  • 労使交渉・協議を通じた制度の充実については、「男女平等いきいき職場づくり方策チェックリスト」を活用した取り組みや、毎年10月に「春季生活闘争 労働環境点検活動」を展開し、加盟組合が自らの労働環境や職場実態の把握を通じて内在する課題を明らかにし、春闘方針策定などに向けた取り組みがなされている。法定を上回る休暇制度(子の看護休暇、時間単位休暇)の条件整理や一部の加盟組合においては、育児短時間勤務の年齢引き上げやカムバック制度が新設されるなど制度の充実が図られている。

※3イクボス:職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、部下のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)です。

※4男性学:男性をジェンダー化された存在と捉え、男女間の問題や男性同士での権力関係など近代社会に発生する諸問題を男性の視点から解明する学問分野です。

※5アンコンシャス・バイアス:日本語では、「無意識の思い込み」「無意識の偏見」「無意識の偏ったものの見方」「無意識なとらわれ」など、さまざまな言葉で表現されている概念です。

Ⅱ.総括と次期計画の策定に向けた視点

(1)総 括

  • 構成総連・加盟組合の継続した取り組みにより、確実に男女平等参画への意識の変化・浸透は図られてきた。しかしながら、「運動方針への明記」、「執行委員の女性参画」や「大会など決議機関への女性参画」など、いずれの目標も達成には至らなかった。
  • 「運動方針への明記」については、加盟組合に対して、女性組合員比率に関わらず、対応を図ることの理解浸透が行き届かなかったと受け止めている。
  • 「執行委員への女性参画」については、女性組合員比率が低い組合もあることから実現が難しい現状にありつつも、特別執行委員としての選出などのステップとしての対応が図れている組合もある。同様に、「大会など決議機関への女性参画」については、女性組合員比率を目標に設定し、取り組みを進めている組合もある。
  • いずれも担い手が限られていることや女性組合員が少ないがゆえに負担が偏る傾向にあり、参画を躊躇しているなどの声が寄せられている。また、組合活動全般への理解および参加率の向上などが課題として挙げられている。
  • 組合規約・規定やこれまでの慣習についても見直しが必要な場合もあることから取り組みが進んでいない。
  • 既存の執行体制に新たな枠を設定することや男女平等参画推進に関する新たなイベントを行うにあたっては、新たな活動費が生じることから対応に苦慮していると受け止めている。
  • 電力総連女性委員会の構成は女性活動の更なる活性化などを目的に「2019年度までに全構成総連が女性役員を選出する」としていたが、目標達成されなかった。女性役員が選出できていない場合においても、構成総連の女性委員会などにおいて中核を担う方が選出されており、女性活動の更なる活性化および母体組織の女性活動の充実・強化に向けて、一定の成果はでているものと考える。

(2)次期計画の策定への視点

  • 女性参画に関しては、すでに世界の潮流は「203050」※6にむけて動きだしていることや、電力総連の進捗状況および連合方針などの情勢も踏まえ対応する必要がある。
  • 次期計画の策定にむけては、「男女平等」に加え、性的指向・性自認(SOGI)など多様性を包含した「ジェンダー平等への取り組み」が求められていること考慮する必要がある。
  • これらを踏まえ、取り組み目的を整理し、「男女平等」を含む「人権が尊重される社会実現」への取り組みが必要となってくる。

※6203050:国際女性機関(UN Women)がジェンダー平等に向け掲げた、「地球上で影響力を持つ者の男女割合を、2030年までに50/50にする(50−50Planet by2030)」との目標」です。

期間設定
  • 連合のジェンダー平等推進計画では、計画期間を2021年10月より9年とし、2020~2021年度運動方針に基づく改革パッケージの検証時期を見据え、2024年9月末までの3年間を「フェーズ1」、残りの2030年9月30日までの6年間を「フェーズ2」とし、取り組むこととしている。
  • 電力総連における次期計画期間は、連合のジェンダー平等推進計画の「フェーズ1」および電力総連各級機関の改選期を踏まえ、2025年9月末までとする。なお、それ以降の計画については、推進計画の進捗状況や連合のジェンダー平等推進計画「フェーズ2」の提起の機会をとらえ、実施状況を把握し、必要に応じて取り組みや計画内容を見直すこととしたい。
目標設定
  • 連合「ジェンダー平等推進計画」の産別や単組における定量的な目標値については、「女性比率に応じた参画の確保」としており、電力総連の現計画の目標と大きく変わらない。
  • 電力総連の現計画が未達だったことを踏まえ、チェンジ必達目標を掲げ、現計画の取り組みを加速させたい。くわえて、更なる活性化を図るためにチャレンジ推進目標を掲げ、目標達成に向け運動を展開したい。
  • 電力関連産業の魅力をより高めるため、「労働組合における男女平等参画」と「職場・社会において”人権が尊重される社会の実現”に向けた運動」を両輪とし、運動を展開したい。
女性参画
  • 財政健全化検討委員会(2019年7月)において、組織活動全般の見直しがなされ、その中で女性活動については、約360万円の効率化が図られるとともに、「女性活動のさらなる前進に向けた女性委員会ならびに女性役員連絡会あり方について検討し、結論を得る」とされていることから、次期計画の中で示したい。
  • 電力総連女性委員会の構成については、三役会議(2017年7月27日)の申し合わせ事項として、「構成総連のご理解・ご協力のもと“女性役員”を選出する。」「2019年度までに全構成総連が女性役員の選出を達成する。」ことの相互確認がなされており、引き続き、母体組織の女性活動の充実・強化に向けて取り組む必要がある。
  • 女性組合員比率が低い組合においては、担い手不足があることから推進に苦慮していることが見受けられる。組合民主主義の観点から、女性組合員比率に応じた参画機会を確保することは重要であり、これを実現するためには、既存のルールや活動スタイルについても見直しを検討し、女性が参加しやすい環境を整備する必要がある。あわせて、労働組合の活動内容についても情報発信を強化し、理解活動を行う必要がある。
  • 電力総連へのクオータ制(割当制)※7の導入可否を検討。

※7クオータ制:男女平等を実現するために性別を基準に両性の比率をもとに一定数を割り当てる制度をいい、積極的改善措置の一手法です。

以上