適正な労働時間管理

適正な労働時間管理に向けた取り組み

「電力総連2023過重労働解消キャンペーン」の実施

電力総連では、時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進など総実労働時間の短縮に向けた取り組みについて、春季生活闘争をはじめ、年間をつうじて推進しています。こうした取り組みの一環として、毎年11月に連合や厚生労働省の「過労死等防止啓発月間」の取り組みと呼応しながら、過重労働解消キャンペーンを展開してきました。
これらの取り組みや近年における働き方の見直し等をつうじて、電力総連大における総実労働時間は経年的に短縮傾向にあります。一方で、業務の高度化や人手不足により個々人の業務負荷が増している職場も見受けられるほか、労働時間に関するアンケート結果によると依然として長時間労働が常態化している職場もあります。また、本年9月に最新の医学的知見をふまえ、精神障害の労災認定基準が改正されるなど、社会的にも過重労働に対する注目が高まっています。
このように、長時間労働の解消や健康障害防止が重要となっていることから、下記のとおり、「電力総連2023過重労働解消キャンペーン」を実施することといたします。

1.実施期間

令和5年11月1日(水)~30日(木)

2.統一的な取り組み

(1)労働時間の適正管理に関する基本ルールの徹底
  • いかなる事情があろうとも、36協定違反や不払い残業は、重大な法令違反であることを改めて職場全体で共有する。
  • 「労働時間の考え方」「日々の労働時間の記録と確認」「管理監督者からの命令に基づく時間外労働」「管理監督者への事前申請による時間外労働」について、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)に基づき、指示する側(管理監督者)と指示される側(労働者)双方に徹底していく。
(2)労働時間実績の確認
  • 「電力総連時短指針」を踏まえ、労使協議や労使委員会等を開催し、労働時間実績を確認するとともに、必要に応じて業務量の均平化や業務運営方法の見直しなどの取り組みを進める。とりわけ、長時間労働者に対する産業医との面談が確実に実施されるよう取り組む。
  • 特別条項付き36協定を締結する場合に1つ以上導入することとなっている健康・福祉確保措置について、職場実態に即したものとなっているか確認するとともに、必要に応じて見直しを行う。
  • 年次有給休暇の時季指定にあたり、時季指定の方法が職場実態に即したものとなっているか、労働者の意見が尊重されているかを確認するとともに、必要に応じ見直しを行う。

参考:労働時間実績の活用例

  • 部署ごとの労働時間等(総労働時間、時間外労働時間、休暇取得)に関する計画および実績を確認し、特に労働時間の長い、または計画と実績の乖離の大きい部署の業務内容・業務計画等を確認し、対応策を労使で検討する。
  • 労働時間等の実績について、部署ごとの分布(最長、最少、平均)を把握し、事業所内で比較するとともに、先進的な取り組みを行っている部署の好事例の水平展開を検討する。また、当該データをもとに、業務量・人員配置の均平化の検討素材とする。
(3)36協定の理解促進と特別条項付き36協定の上限見直し
  • 36協定の趣旨や締結内容について、組合員および管理監督者に確実に理解されるよう職場内における理解活動を行う。
  • 特別条項付き協定は可能な限りその対象業務と対象労働者を限定するとともに、適正な時間となるよう取り組む。とりわけ、平日および休日の合計の上限時間が80時間を超える場合には、健康障害防止の観点から、上限引き下げに向けて取り組む。

参考:電力総連2023春闘方針 36協定締結に関する項目

  • 休日労働時間を含む時間外労働時間は、1ヵ月45時間以内、年360時間以内に抑えることを原則とする。
  • やむを得ず特別条項を締結する場合においては、休日労働時間を含めて年720時間以内とすることを基本とし、労働時間の延長は原則として限度時間(1ヵ月45時間以内、年360時間以内)を超えないものとされていることを踏まえ、より抑制的な時間となるよう取り組む。
  • 休日労働を含めて年720時間を超えざるを得ない場合であっても、業務運営や人員配置の見直しに向けた労使協議を行い、休日労働時間を含め年720時間以内に近づけるべく、段階的に引き下げを行う。
  • 時間外労働の上限規制適用猶予業務(建設業・自動車運転業務など)や適用除外業務(新技術・新商品等の研究開発業務)においても、他業種と同様の上限時間を設定すること等を基本に取り組む。
  • 時間外労働時間の積算は、法定労働時間ではなく所定労働時間を上回る労働時間とするよう取り組む。
(4)定時退社日やノー残業デー、ノー休日出勤デーの設定

労働時間管理の意識向上や業務の効率化、職場風土の改革、メリハリをつけた働き方の強化につながるよう、定時退社日や、ノー残業デーなど職場実態を踏まえた取り組みを行う。

(5)テレワークを導入している職場における取り組み
  • テレワークを実施する者についても、原則として事務所に勤務する者と同様の労働時間管理となるよう取り組む。
  • テレワークの特性上、長時間労働による健康障害発生等の可能性が指摘されていることを踏まえ、時間外・休日・深夜労働に対する使用者による許可制の徹底や、時間外・休日・深夜労働時間帯のうち許可を受けていない時間帯における社内システム等へのアクセスが制限されるよう取り組む。
  • テレワークの実施に伴い事務所に勤務する者が減少することを踏まえ、出勤する者の業務実態を把握するとともに、必要に応じて見直しを行う。
  • 労使協議や労使委員会等を活用し、実施状況を踏まえた検証を行うとともに、必要に応じて見直しを行う。

3.各級機関の取り組み

(1)電力総連の取り組み

機関紙やホームページ、キャンペーン用チラシを活用し、キャンペーンの実施や取り組み内容について周知活動を行う。
構成総連と連携し過重労働解消に向けた具体的事例を収集し、共有を図る。

(2)構成総連の取り組み

機関紙等を活用した周知活動を行うとともに、必要に応じて構成総連大の労使懇談会等のテーマとして取り上げる。
10月より実施している「労働環境点検活動」を活用しフォローを行う。

(3)加盟組合の取り組み

構成総連との連携のもと、職場ごとの実態を踏まえ、改善・充実に向けた具体的な取り組みを図る。

参考:改正労働基準法、改正労働安全衛生法の概要
(2019年4月1日施行 中小企業は2020年4月1日)

時間外労働の上限規制
時間外労働の上限規制について、原則(限度時間)として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別な事情がある場合でも、①年720時間、②休日労働を含み単月100時間未満、③休日労働を含み複数月平均80時間、④原則である月45時間の時間外労働を上回る回数は年6回までを限度とする。
労働時間の客観的な把握
長時間労働に対する健康確保措置として、すべての労働者を対象とした客観的な方法による労働時間の把握義務を規定。
年次有給休暇の取得促進
使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならない。
勤務間インターバル制度の普及促進
事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努める。

参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の主なポイント

使用者の責務
使用者は労働時間を適正に把握する責務がある
労働時間の考え方
  • 労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる
  • 労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断される
  • たとえば、次のような時間は、労働時間に該当する
    1. 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
    2. 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
    3. 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録する
  1. 原則的な方法
    1. 使用者が、自ら現認することにより確認する
    2. タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する
  2. 上記(1)によらず、やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合
    1. 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行う
    2. 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をする
    3. 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認する
      その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならない
    4. 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならない
      時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずる
      36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが労働者等において慣習的に行われていないか確認する
賃金台帳の適正な調製
使用者は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならない
労働時間を管理する者の職務
事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図る
労働時間等設定改善委員会等の活用
使用者は、事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間等設定改善委員会等(安全衛生委員会や労働時間を論議する労使委員会を含む)の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行う