国際活動

モンゴルエネルギー地質鉱山労働組合との定期交流を4年ぶりに実施
更なる連携強化を求める声を受ける!


モンゴルエネルギー地質鉱山労働組合役員一同

2023年9月19日(火)~22日(金)にかけて、モンゴル国を訪問し、モンゴルエネルギー地質鉱山労働組合(以下、MEGM)との定期交流を4年ぶりに実施した。MEGMは、インダストリオール・グローバルユニオンに加盟し、2012年8月に交流協定を締結している。交流締結後、4回目のモンゴル訪問においても、意見交換や視察を通じて国籍を超えエネルギー産業で働く仲間の連帯を深めた。

1日目の夕刻、2021年に開港したばかりのチンギスハーン国際空港に降り立ち、MEGM役員に出迎えられ、首都へ向かった。旧国際空港は、首都ウランバートルの近くにあるものの開港されて以降、南と東側を山に囲まれているため、離着陸は北西側のみしか利用できないという立地上の問題から遅延や欠航の頻発といった問題を抱え、拡張事業等を行えない状況であった。この課題解決に向けて、日本国政府の政府開発援助による円借款が行われ、首都郊外に建設されたのがチンギスハーン国際空港である。広大な草原の中に立地された新国際空港から首都へ近づくと、帰宅ラッシュの時間と重なり、大渋滞となった。民主化後、地方から首都へ移住する人が急速に増えている様子がうかがえた。


ドルゴール会長(左)、河野会長代理(右)

2日目は、MEGM、モンゴル労働組合連盟(CMTU)、国立送電センターおよび第三火力発電所の視察と組合役員らとの意見交換を実施した。
MEGMとの意見交換では、2022年に就任した4代目の会長となるドルゴール会長より歓迎の挨拶の後、モンゴルのエネルギー関連産業の現状や今後の動向などの説明を受けた。電力総連からは河野会長代理より、日本の電力関連産業の動向や労働組合としての活動について説明を行った。
MEGMから示された主な活動方針と具体的な事例については、以下の通りである。

組織力向上

  • 産別労働組合が主催となり、労組役員向けの労働紛争や安全に関する研修を実施する。
組織拡大
  • 外国投資を受けて設立された会社を組織化する。
労働条件の向上
  • 政府の委員会に参加し、労働条件の向上に努める。

いずれも労働組合として同じ課題を抱えており、引き続き、情報交換を行うなど連携していくことが確認された。


ブヤンジャルガルCMTU事務局長(中央)

次に、モンゴルにおける「連合」に位置する組織「モンゴル労働組合連盟(CMTU)」を訪問し、ブヤンジャルガル事務局長(MEGM出身)と意見交換を行った。事務局長からは、「モンゴル政府は日本政府から様々な形で支援をいただいている。また、電力総連との定期交流はとても有意義なものである。電力総連の歴代役員はもとより、連合や国際労働財団(JILAF)との交流を誇りに思っている。CMTUにおいてMEGMの存在感や影響力はとても大きい。ドルゴール会長は就任後、政府所轄の省庁との協約締結や労働法改正に向けてリーダーシップを発揮している。」と述べた。電気事業については「モンゴル国において、電力単価は卸単価よりも安く設定されている。しかしこれでは、電力関連産業で働く組合員の労働条件を改善できない。単価を自由に設定することができなければ、人材は確保できない。また、電力設備等が更新できずに労働災害などを引き起こしかねない。」と述べた。
河野会長代理からは電力総連の状況について触れ、「若い方々の離職が増えてきており、人材の確保について、共通する部分がある。安全衛生の確保は変わらずとても重要な取り組み事項である。」また、喫緊課題として、ALPS処理水の海洋放出を巡る課題について触れ、「エネルギー政策を円滑安定的に推進していくうえで、福島第一原子力発電所の廃炉措置を着実に進めていくことが不可欠である。海洋放出については、客観的かつ国際的視点を踏まえ、労働組合の立場からも風評対策等に取り組んでいく必要がある。モンゴルで働く仲間の皆様へも理解と協力をお願いしたい。」と述べた。

その後、現場視察を行った。
第三火力発電所においては、国内石炭を燃料とし、旧ソ連製の設備を延命しながら発電事業を行っていることの紹介を受けた。いずれの視察先でも女性従業員が現場第一線で働いていたことが印象深い。女性進出について、社会主義時代に政策的に男女平等が進み、女性の全体的な社会進出が保障されていることが背景にある。なお、MEGMにおける女性役員比率は36%が女性を占めているとの紹介があった。


国立送電センター

第三火力発電所

3日目は、ナラハ地区にある配電工事を担う支部を訪問し、意見交換を行った。旧式の設備を抱えながら安定供給に努めているという。現在でも配電柱は、未だに木製が多く、現在、コンクリート柱への建て替えを行っているとの説明を受けた。冬になれば、豪雪となり作業もままならないことから3月から11月に業務が集中するとのことだった。


ナラハ地区にある配電会社

モンゴルエネルギー地質鉱山労働組合(MEGM)と電力総連の友好をさらに深めるために、電力総連訪問受け入れを約束し、交流を終えた。

ベトナム全国電力労働組合との定期交流を5年ぶりに実施!


VNEPW役員の歓迎を受ける!ビン副会長(中央左)、フオン事務局長(右から2番目)

2024年4月21日(日)~26日(金)にかけて、ベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム)を訪問し、ベトナム全国電力労働組合(以下、VNEPW)との定期交流を5年ぶりに実施した。VNEPWは、インダストリオール・グローバルユニオンに加盟し、2013年4月に交流協定を締結している。交流締結後、3回目のベトナム訪問においても、意見交換や視察を通じて国籍を超えエネルギー産業で働く仲間の連帯を深めた。


代表団挨拶を述べる、片山事務局長

国営企業ベトナム電力総公社(以下、EVN)本社を表敬訪問し、ビン副会長をはじめとするVNEPW役員の皆様の歓迎を受けた。はじめに、本社内にあるEVNのこれまでの歴史とベトナムにおける電力事業に関して、展示パネルなど交えて紹介を受けた。その後、ベトナム労働総同盟のヒエウ国際担当(写真左奥)も同席し、VNEPW役員団との意見交換を実施した。

ビン副会長より歓迎の挨拶の後、ベトナムのエネルギー関連産業の現状や今後の動向などの説明を受けた。電力総連からは片山事務局長より、「ベトナム全国労働組合(VNEPW)と電力総連とは、両国の国交正常化40周年を迎える2013年に締結してから、まもなく11年となる。この間、相互の友情を深め、互いの国を学び、電力労働者の社会的地位の向上にともに尽力してきた。限られた日程となるが、大きく発展を遂げられたベトナムとその発展を支えている電力産業の組合員の皆様の実情を学ばせていただきたい。」と交流に際しての代表挨拶を述べた。玉島政治渉外局長からは、日本の電源開発の変遷、エネルギー政策および諸外国への技術協力にふれ、「日本の電力各社は、総合的な観点から環境政策に取り組みを進めている。引き続き、アジアをはじめとする諸外国とも連携し、二酸化炭素の排出抑制に取り組んでいくことが大事である。」と述べた。意見交換では、昨夏、ベトナムは猛暑による電力需要の増加から、例年以上に電力不足が深刻化し、生産活動および市民生活にも影響を与えており、今後ますます電力確保の対策が急がれる状況であることがうかがえた。


中国電力労働組合出向者との意見交換

3日目は、ベトナム北部の南側に位置するハティン省キーアイン県にある「ブンアン石炭火力発電所」の視察を行った。既設のブンアン1石炭火力発電所の隣接地には、ブンアン2石炭火力建設所があり、IPP(独立系発電事業)スキームにより発電事業がなされ、日本からは中国電力(株)及び四国電力(株)が出資する合弁会社(VAPCO)が建設を行っている。現在、中国電力労働組合の組合員の数名が現地に滞在し、建設に尽力していることもあり、関係者へ同建設所の視察を切望し実現した。


VAPCO出向メンバーを囲んで(ブンアン2火力建設所)

中国電力労働組合の出向者との意見交換では、「ベトナムにおける2025年のカーボンゼロの取り組み状況」、「ブンアン2プロジェクトの意義」、「投資回収バランス」や「日本からの技術提供の内容」などについて、意見交換を行った。


ブンアン1火力発電所の絵画の贈呈を受ける

同プロジェクトは、電力需要が年々増加するベトナムの電力供給を支える重要な電源と位置付けられており、最新の高効率機器を活用することで低炭素化に向けて一定の役割を担うものであること再認識した。アジア諸国の経済発展は、まだまだ道半ばであり、日本として超々臨界圧発電(USC)をはじめとする高効率化技術の提供が必要であると認識を強めた。
その後、ブンアン1火力発電所を訪問し、同発電所の労働組合から熱烈な歓迎を受けた。視察では、発電設備や中央制御室のみならず、寄港していた石炭船の揚炭作業を間近に見ることができた。


ブンアン1火力発電所 中央制御室にて

4日目は、ニンビン省にある「ニンビン電力公社」の視察を行った。同社は歴史的建物が数多く残る「ベトナム文化発祥の地」ニンビン省を中心に、送配電網を維持管理している。事業の説明を受けた後の意見交換では、ベトナムの暑季とも呼ばれる猛烈に暑い時期における安全衛生対策(熱中症)について取り組み状況を伺ったところ「夏は仕事しないことが一番の対策である。年間を通して業務をコントロールし、涼しい時期に巡視点検、設備更新などの業務を行うように工夫している。」と述べた。今回訪問した、4月下旬においても夜明けから夕刻まで蒸し暑さが続いており、これから本格的な夏場を迎えて屋外作業することは、極めて困難である。


安全衛生対策等について質問する、片山事務局長
したがって、ベトナムのように熱い場所において、労働者の命を守るためには「夏場に仕事はしない」ということは極論ではなく、道理にかなった取り組みだと受け止めた。また、送電網と配電網を1つの制御盤に集約していたことも印象深い。

ベトナム全国電力労働組合(以下、VNEPW)と電力総連の友好をさらに深めるために、電力総連訪問受け入れを約束し、交流を終えた。